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745 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/12(月) 23 56 52 ID 6BFPWDF. ひたぎ「はぁ…」 C.C.「どうした?」モグモグ ガン キィン ひたぎ「いえ…みんな歓迎会を盛り上げようと必死になってるじゃない?」 C.C.「まあそうだな…」モグモグ ズガガ ビリビリ ひたぎ「となると、今はもうそれ以外の話ってできない雰囲気になってるでしょう?」 C.C.「それはそうだな…」モグモグ ガブッ ギャーフコウダー ひたぎ「でもねぇ…完全にここで天江さんが来るなんて予想外だったらしくて…全くネタが無いそうなのよね…」 C.C.「それはみんな分かってるだろう…牢獄組なんて苦肉の策まで使ってたんだから…」モグモグ エクスカリバー ソレハヤリスギダロー ドカーン ひたぎ「下手にリレーしたら他の書き手さんのネタの邪魔になるかもしれないし…」 C.C.「それ今更気にすることか?大体リレーと言うのはそういう物だろ」モグモグ ハヤクゴチソウヲー ダカラマダダッテイッテンダロッ ひたぎ「当たり障りのないネタを考えるのも難しいそうなのよね…」 C.C.「そんなの気にせずいつも通り思いつきのネタをすればいいのに…問題が起こらない範囲で…」モグモグ アーチャー「お前らいい加減にこいつらを止めるの手伝え!!」 士郎「ちょっと待てセイバー!!もう少し!もう少しだけ待ってくれ!!」 セイバー「さっきからそればかりではないですか!!私のお腹はもう限界です!!!」グーギュルルルル インデックス「私ももう限界なんだよ!!」グーギュルルルル 上条「分かったから噛みつくな!!痛いッ!痛いから!!俺の頭は食べられないから!!」 美琴「あ~もう…!!どんだけご馳走に執着してんのよ…!?」ハァハァ 黒子「早く…早く歓迎会を始めて欲しいですの…!」ハァハァ ひたぎ「別に先に食べさせてもいいんじゃないの?シーちゃんはさっきからピザを食べてるわよ」 C.C.「ん?私は食べてないぞ」モグモグ ひたぎ「え?でもさっきから…」 C.C.「食べてるのはこいつだ」 衣「うむ!大変美味である!!」モグモグ←C.C.の膝に座ってます 全員「…………………へ?」 衣「む?どうしたのだみんな?」モグモグ 全員「何ぃいいいいいいいいいッ!!!!!!!!!!???」 746 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/12(月) 23 57 18 ID 6BFPWDF. 衣「む?何をそんなに驚いている?」モグモグ アーチャー「いやいやいやいつだ!?いつの間にそこに居た!!?」 衣「む?いつからだったかなシーちゃん?」モグモグ C.C.「結構前からだな」 黒子「いつ控え室を出たんですの!?」 衣「それも随分前だ。いつまでも待っているだけと言うのは我慢できぬ。だから自分でここに足を踏み入れた」モグモグ 美琴「それが何でここに!?」 C.C.「さっき見かけたから連れてきた」 士郎「何でそこに座っているんだ!?」 衣「シーちゃんがここに座れと言うのでな」モグモグ ひたぎ「と言うか何であなたがシーちゃんのことをシーちゃんって呼ぶのよ!?」 C.C.「私がそう呼べと言っておいた。しーしーよりはいいだろ」 衣「うむ!衣とシーちゃんは友達だからな!!」モグモグ C.C.「いやそれは違う」 衣「え!?違うのか!?」モグモグ C.C.「お前はあくまでチーズくんの代わりだ。それを忘れるなコロちゃん」 上条「コロちゃんって…某有名ロボットを思い出すな…」 衣「むぅ~…だが衣は諦めないぞ!!絶対にシーちゃんと友達になる!!」モグモグ C.C.「まあ勝手にしろ…それよりこっちのピザも美味いぞ。食べてみろ」 衣「うん!」モグモグ アーチャー「…どう見ても仲のいい友人同士にしか見えないんだがな…」 ひたぎ「……何かしら…この自分のポジションを奪われたような感じ…」 セイバー「美味しいです!!」モグモグ インデックス「最高なんだよ!!!」モグモグ 上条「……結局食われちまってるし…」 士郎「……また作らないとな…」 747 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 00 13 46 ID NrJFlrsM 衣「しかし最初にインデックスを見たときは驚いたぞ」モグモグ C.C.「あいつは主催者権限があるからな。生きててもここに来ることができるんだ」 インデックス「む!それは私の物かも!」モグモグ セイバー「何を言う!?ここは戦場!早い者勝ちです!!」モグモグ 衣「雰囲気も全く違うし…」モグモグ C.C.「あれがあいつの素だ。本来あんな無口無表情のクーデレキャラじゃない」 衣「そうか…衣も今のインデックスの方が好きだ!!」モグモグ C.C.「おい、口にチーズがついてるぞ」ヒョイ 衣「あ、ありがとうシーちゃん!」パクッ C.C.「礼などいらん、自分のぬいぐるみが汚れるのは嫌だからな」 衣「衣はぬいぐるみではない!!」 ひたぎ「私の…私のポジションが…」 美琴「…ねぇ…龍門渕さんたちは、天江さんがもう来てること知ってるの?」 黒子「知らないんじゃありません…?準備に夢中になってますから…」 アーチャー「ぬおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!」トントントントン 士郎「うおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!」ジャージャー 上条「どりゃあぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」シャッシャッシャッ 美琴「…あっちも大変ね」 黒子「料理を作り直さないとなりませんもの…仕方ありませんわ…」 748 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 23 10 02 ID NrJFlrsM 衣「ふぅ…大変美味であった」 セイバー「ご馳走様です」 インデックス「お腹いっぱいなんだよ」 美琴「…歓迎会が始まる前に満腹になってどうすんのよ?」 セイバー「問題ありません。それまでに胃袋を空にしますので」 黒子「…貴方の胃袋は宇宙だったのでは?」 セイバー「そんなの冗談に決まっているではないですか」 黒子「そうですわよね…聞いたわたくしが馬鹿でしたわ…」 C.C.「ほら、口元が汚れてるぞ…ちゃんと拭け」フキフキ 衣「わっ…そ、それくらい自分でできる…」 ひたぎ「………」ジーーー 美琴「…大丈夫よ。ずっとコンビやってたんだから、そんな簡単にポジションを奪われたりしないって」 ひたぎ「いえ…それはもう気にしてないわ。ひたぎウィッチの絆は強固だもの…あんな新人にシーちゃんを奪われるわけがないわ」 黒子「新人って…」 ひたぎ「私が今考えているのはもっと別のことよ」 美琴「別のこと?」 ひたぎ「天江さんを膝に乗せて抱きしめてるシーちゃん…シーちゃんの膝の上に座って抱きしめられてる天江さん…みんなが羨ましがってるのはどっちかしら?」 美琴「どうでもいいわ」 黒子「どうでもいいですの」 ひたぎ「結構重要なことだと思うんだけど…」 美琴「心底どうでもいいわ」 黒子「果てしなくどうでもいいですの」 ひたぎ「そう…ちなみに私は二人とも羨ましいわ」 美琴「だからどうでもいいっつーの!!」 黒子「全く興味ありませんの!!」 ひたぎ「絵になるわね~あの二人…読み手の人たちは上手く頭に描けているかしら?」 二人「「知ったことかッ!!」」 749 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 23 10 44 ID NrJFlrsM 衣「ところでずっと気になっていたのだが…」 C.C.「ん?何だ?」 衣「何故あの三人はあそこで寝ているのだ?」 アーチャー「………」チーン 士郎「………」チーン 上条「………」チーン C.C.「…気にするな…ここでは日常茶飯事なことだ」 ひたぎ「敢えて言えば…彼らは燃え尽きたのよ…」 衣「?…それより衣の知らない者たちもたくさん居るな。早く紹介してくれ!」 C.C.「…すごく今更だな」 美琴「あ~そうね…私は御坂美琴、黒子の先輩よ。よろしくね」 衣「御坂だな!衣と友達になってくれ!」 美琴「もちろん。黒子の友達なら私の友達も同然よ」 衣「おお!また衣の友達が増えた!」 黒子「御坂お姉様は学園都市でも最高の電撃使いなんですのよ」 衣「おお!よく分からないがすごいんだな!!」 美琴「いや~、改めて言われると照れるわ…」 C.C.「その能力で全自動卓を操作してイカサマをするのが得意なんだ」 美琴「違う!!できないこともない…って言うかやったこともあるけど別にその為の能力って訳じゃないから!」 衣「…御坂、イカサマはダメだぞ」 美琴「…はい、すみません」 750 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 23 11 20 ID NrJFlrsM セイバー「では次は私が…私はセイバーです。よろしくお願いします」 衣「うむ、よろしくセイバー!衣と友達になってくれ!」 セイバー「ええ、私でよろしければ」 衣「やった!また衣の友達が増えたぞ!」 ひたぎ「衣さん、彼女はあの有名な騎士王なのよ」 衣「棋士?将棋を打つのか?それとも囲碁か?」 セイバー「いえ、その『棋士』ではありません。私は『騎士』、戦士のことです」 衣「…戦士?………その恰好で?」 セイバー「ぐっ…!…あの、すみません衣…できればそのことには触れないでいただきたいのですが…」 美琴「ちょっと色々あって…あまりツッコまないであげてくれる?」 黒子「彼女も好きであんな恰好をしている訳ではないので…」 衣「?…よく分からないが…分かった」 C.C.「どっちなんだ…」 インデックス「次は私なんだよ」 衣「?…知っているぞ。インデックスだろ?」 インデックス「うん…でもあそこで会った私は、私であって私じゃないから…」 衣「………」 インデックス「だから改めて自己紹介なんだよ。私はIndex-Librorum-Prohibitorum…インデックスって呼んで欲しいんだよ…それで…」 衣「?」 インデックス「私と、その…友達になって欲しいんだよ!」 衣「!…もちろんだ…よろしく頼むぞインデックス!」 インデックス「ありがとうなんだよ、ころも!」 751 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 23 11 56 ID NrJFlrsM C.C.「おい、いつまで寝てるんだ?次はお前たちの番だぞ」 アーチャー「ぐぅ…少しは労われ…私はアーチャーだ。今はこの食堂の料理長をしている」 衣「………」ジーーー アーチャー「?…何かな?」 衣「いや…何だか…アーチャーは衛宮に似ているな」 アーチャー「なっ!?」 士郎「へっ?」 アーチャー「な、何を言っている?私と衛宮士郎のどこが似ていると言うのだ」 衣「確かに外見は全くの別人にしか見えん…だが、何と言うか…纏っている雰囲気というか…とにかく似た感じがするのだ」 士郎「…よく分からないな」 アーチャー「ふん…それは気のせいだ」 衣「む?しかし…」 アーチャー「くどい」 衣「………」 C.C.「コロちゃん…そのことはもう言わない方がいい…色々あるんだよ」 衣「…シーちゃんがそう言うなら…」 ひたぎ「で、最後に彼だけど…」 上条「あ~…どうも…上条当麻です…」 衣「上条…?どこかで聞いたような…」 ひたぎ「貴方の友達のことをどうでもいいと切り捨てた最低で愚図でゴミみたいな童貞人間よ」 上条「そこまで言う!?」 衣「なあシーちゃん、童貞とは何だ?」 C.C.「ああそれはな…」 美琴「教えるなッ!!」 黒子「天江さんにはまだ早いですのッ!!」 ひたぎ「いや彼女の方が貴方たちより年上よ」 752 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 23 12 36 ID NrJFlrsM 上条「え~とですね…あの時はちょっと焦ってて…その…他のことに気を配る余裕なくて…」 衣「………」 上条「本当はあんなこと言うつもりじゃなくて…思わず口に出ちまったって言うか…」 衣「………」 上条「だから…その…すみませんでした!!」 衣「………」 インデックス「ころも、許してあげて欲しいんだよ…とうまは本当は誰よりも人のことを考えて動く、お人好しなんだよ」 上条「インデックス…」 インデックス「ただちょっと頭が悪いから、語彙が少なくてついあんなこと言っちゃっただけなんだよ」 上条「あのな…」 衣「…うん…分かった…許す」 上条「あ、ありがとう…それで…あの…」 衣「?」 上条「その…俺とも友達になってくれないか?」 衣「断る。衣はお前が嫌いだ」 上条「全然許してくれてないじゃないですかーーー!!!」 ひたぎ「やっぱりもっと誠意を見せないと駄目ね…今からでも鉄板を用意してもらいましょう」 上条「ちょ!待って!それだけは本当に勘弁してくださいお願いします!!」 ひたぎ「うるさいわね、行くわよ」 上条「嫌だあぁ!!!誰か助けてくれええぇぇぇーーー………」バタン C.C.「よーしよく言えた。偉いぞ」ナデナデ 衣「うわぁ!頭を撫でるなー!…しかしあれでいいのか?上条は大分傷ついているように見えたが…」 C.C.「いいんだ。あいつはあれで喜んでいる変わり者なんだ」 美琴「嘘を教えるな嘘を…」 黒子「やはり貴方の入れ知恵でしたの…」 C.C.「まあいいじゃないか。おかげで後で面白いものが観れる」 【上条、歓迎会で焼き土下座決定?】 753 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/13(火) 23 13 19 ID NrJFlrsM アーチャー「しかし、いつになったら歓迎会は始まるんだ?料理は改めて作り直したが…」 士郎「これ全部運ぶのも一苦労だなぁ…」 美琴「龍門渕さんたちが張り切り過ぎて…準備に時間が掛かってるみたいね…」 黒子「主役はもう来ているというのに…それにも気付かず…」チラ 衣「ここには他にも色んな者たちが居るのか!?まだまだ友達ができるだろうか!?」 C.C.「さあな…会ってから考えた方がいいと思うぞ…一癖も二癖もある奴ばかりだからな」 衣「麻雀を打てる者も居るのか!?」 C.C.「ああ、ここに居る奴はほとんど打てるぞ…私もな」 衣「そうか!じゃあ今度一緒にやろう!」 C.C.「まあ…別に構わないが」 衣「楽しみだ!早くみんなに会いたいぞ!!」 セイバー「早くしなければせっかくの料理が無駄になってしまいます!」 インデックス「その時はまた私たちで食べればいいかも!」 セイバー「成程!それは名案です!」 四人「やめて下さいお願いします」 【食堂組、歓迎会開始待ち】
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するがだてシャルトリュー ◆zg9MHZIP2Q 猿と竜。 神原駿河(かんばる・するが)と伊達政宗(だて・まさむね)。 猿の悪魔『レイニー・デヴィル』の片腕を持つ女と、竜の二つ名を持つ片目の男。 出会った場所は大量の本の山。神原駿河が好む属性が余すことなく詰まった欲望の塊。 政宗が無一文と見なしたゴミを、彼女は一冊残らず己のディバッグに挿入している。 「しまった。ここに隠れていたのか。 “奥州フットー!新ジャンル『勃て政宗』第三巻”。自宅に取り残されたと思っていたが。 こんな事なら、まとめておいた他の巻をしまわずに置いておけば良かった――ああ、すまなかったな。 この“奥州フットー!新ジャンル『勃て政宗』”は政宗受けモノとしては異例の作品なのだが……」 誰も聞いていないのに、勝手に語り始めたぞ。 神原一押しの同人誌。苦しいネーミングセンス。もしかして新ジャンルと独眼竜が掛け言葉になっているのか? 彼女には悪いが、こういう説明描写は大抵、大きく時間を浪費する割りに内容は無いようなので。 「ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ」 丁重にカットさせていただこう。 「……今や商業路線はおろかネットでもGET不可能の幻の品だ。全国の武将相手に日夜雄弁を振るう姿がそそるぞ」 草むらに隠れていた最後の一冊をしまいながら、神原は口元からダダ漏れていたよだれを拭く。 まるで赤子を孕んだ妊婦のようにディバッグをさする彼女は充実感でいっぱいだ。 「神原駿河、アンタただの雑魚じゃないな」 一方の政宗の表情は真剣だった。 さっきまで神原と一緒に本の整理をしていたというのに。 いつの間にか手に入れていた木製のスティックを、容赦なく神原に突きつけている。 仕方の無いことだろう。 神原の素行は、生まれたての赤ん坊にポルノビデオを見せるくらい、突き抜けているからだ。 政宗にとっては、怪しげな暗号を羅列されているようにしか思えない。 「そうか。わかった。そこまで聞けば、もう十分だ。つまり、私は脱げばいいんだな?」 「独眼竜は伊達じゃねぇ。アンタがどう取り繕ろうが、この眼は誤魔化されねぇぜ」 「うん、そうだ……ああ、ちょっと待ってくれるかな、筆頭伊達政宗殿。すぐに裸になるから。 初対面とはいえ、史実に残る名将軍と言葉を交わす。ならば裸になるのが礼儀というものだ」 ところで、この『独眼竜は伊達じゃない』という言葉。 僕にはどこか矛盾しているような気がする。 純粋に伊達政宗は伊達ではない、という意味なのだろうが、傍目にはギャグにしか聞こえない。 「神原駿河、俺の命令を無視して勝手に進めんな。人の話を聞け」 「おお。やはり筆頭はやはりタチだった。私の目に狂いはなかったな。 “苗字が『いたち』と読めるから伊達政宗はタチ”という説が本人の口から証明されたのは、非常にうれしく思うぞ。 ちなみに私は雑魚ではないよ。 むしろネコだ。シャルトリュー種顔負けの人懐こさ、辛抱強さを提供しよう。 ああ。何という事だ。奇しくもこれでお互いの需要が満たされてしまったな――だが、安心してほしい。 そうして欲しいのは山々だが、本音を言えば、操を捧げる相手はもう決めているんだ」 政宗はスティックを強く握り締め、みしみしと音を立てた。 「……差し支えなければ、教えてほしいな。これは尋問なのか」 どうやらそれが功を奏したらしい。 神原は命の危険を感じたらしく、自分で話題を変えた。 政宗がもっと穏やかな人間だったら、あと1時間は性交渉時における攻め手(タチ)と受け手(ネコ)の議論を聞かされていただろう。 「さっきから聞いてりゃ、“攻め”だの“受け”だのfuggyなことをしゃべくりやがって。 新米KUNOICHIか? 俺のよく知った野郎共の話ばかりしやがる。 ……兵法を熱弁するのは勝手だが、うちの軍の情報も把握してやがんのか」 「なるほど。尋問なんだな。あなたのような人間にされるなら“駿河問い”が文字通りうってつけだぞ。 もちろん心得はあるのだろう? 下手人を縄で縛って吊るしてしまう拷問だ。 後で開放するのを約束してくれるなら、喜んで受けよう。 放置プレイを捨てるのは惜しいが、あいにく状況が状況だし、私もまだ死にたくない」 「O.K.Garl,洗いざらい全部しゃべっちまうのが利口だぜ? 」 「筆頭の亀頭をしゃぶる事で許されるのなら、私は一向に構わないが、まずは話を聞いて欲しい。 誤解を解くのはそれからでも遅くはないだろう。さあ、私に支給されたこの縄で好きにしてくれ」 数分後、神原駿河の手は後ろに回され、両手首を縛られた。 「あ、うう、あ、太くて、硬い……んっ! 筆頭、もっと深く、もっとキツキツにして……」 もちろんこれは縄の話である。 神原はもっと情熱的な束縛を期待してたのだが、喘ぎ声がうるさかったらしく、政宗は簡易で済ませた。 史実では伊達政宗は沢山の妻と子供を持つハッスルマンだったらしいが、ここにいる彼は常識人のようだ。 「単刀直入に言うと、私は武将の類ではないぞ」 神原は政宗に二度目自己紹介をした。それもより正確に克明に。 自分はレズで、BL好きな腐女子で、ネコ(性行為で受動的な側)で、受けで、ロリコンで、マゾで、露出狂で、欲求不満だと。 言い換えれば、自分の性癖を暴露したといったほうが正しいのだろう。 腕の包帯にあるレイニーデビルについては話さなかった。 本当に話さなければならない事実が逆になっている気がする。 「okey-dokey(はいはい、わかったよ)……BEET YELLってのはつまり男色のことか。不勉強だった」 「なるほど。私はこれまでBLは『ボーイズ・ラブ』の略と信じていたのだが、『ビート・エール』の略という可能性もあるのだな」 恐れていたことが起こってしまった。 もともと外国の慣習に興味のあった政宗は、持ち前の学習能力を生かしてBLを知った。 男色にさほど抵抗のない戦国時代の人間に、神原はこの上ない余計な知識を植えつけてしまった。 今から図書館に行けば、属性について論争を巻き起こす武将たちが絵巻で見られるだろう。 異文化交流というよりタイムパラドックス、明治政府もビックリだ。 「そしてアンタは、お国の動乱と噂話と妄想が大好きな庶民で、欲求不満の変態。OK? 」 「話が早くて助かる。何せ近日中に妻妾同衾する計画を目論んでいるからな。欲求不満にもなるさ」 「Good……ほめとくよ」 武家の慣習に疎そうな発言をふまえたのか、政宗には神原が異国あがりの町娘に見えるらしい。 変態という属性をしっかり抑えているあたり、抜かりが無い。 確かに神原の格好を大名が見れば、バテレンの正装……ってそんなわけあるか。 政宗も人のことを言えた義理ではないと思う。鏡を見ろ鏡を。 「筆頭はこれからどうするんだ? 」 「目指すは天下無双だ。こんなところで足止めくらってる暇はねぇ。敵の根城を叩き潰し、大将を討ち取るまでよ」 「流石は奥州の独眼竜。攻めて攻めて相手をヒィヒィ言わせるところは、相変わらずだな」 ちなみに神原も政宗の素性を詳しく問おうとはしなかった。 政宗が話すことは、ところどころ間違ってはいるものの、歴史上で伊達政宗が活躍したことと一致していた。 神原は政宗を“怪異”、すなわち戦国武将の幽霊のようなものと認識していた。 政宗が嘘を言っているようには見えなかったし、帝愛グループが話していた“魔法”のせいと考えれば合点がいくからだ。 「奴さんは城にコモってりゃ勝てるとでも思ってるんだろうが、あいにく俺はknockもせずに入る性分でね」 「ほう。奇遇だな。私もだ。ホモるだけが全てではない。行為前の絶妙な距離感はワビサビに通じる芸術品だ」 それから彼らはこの島の詳しい地理を把握するために、徒歩以外の移動手段を確保することになった。 政宗は野生の馬を探そうとしたが、神原の提案で、西にある施設に向かうという結論に落ち着いた。 「悪かったな。これでアンタは自由の身だ」 「あっ、そんな殺生な……もっとお戯れを」 「Ha,ha!やなこった」 「さあ、早く、私のことを『この卑しいペットが!』と呼んでくれぇっ」 2人はいたって真面目だが、縄をほどく人間とほどかれる人間の会話とは到底思えない。 というか会話が成立していない。 政宗は神原のイカレっぷりに根負けしたのか、必要以上に彼女を疑うことをやめたようだ。 神原は神原で、とりあえずホイホイとついて行くことにしたらしい。 「本音を言えば、縛ったまま私をおんぶして欲しかったな。焦らしプレイも嫌いではないが別腹だ。 縛られたまま連れ去られる……なんて頭がフットーしそうなシチュエーションなんだ」 「そのsituationをここでやれってか? no joke(冗談じゃねぇぜ)。 将来天下無双になる男を使い走りにするたぁ上等じゃねぇか」 「言われなくともわかっているさ。冗談だ。というより、私が本当にフットーするのは戦場ヶ原先輩と繋がったときだけだ」 神原はハッと顔を強張らせた。 自分の思い人の名前を、思わず出てしまったからだ。 「戦場の焼け野原と繋がる? 命粗末にしちゃってCoolじゃないねぇ」 「そ、そうだった。筆頭はディルドーを知らないのだったな」 「DEAL道? 異国の信仰宗教か? 」 彼女はまだ自分の友人たちのことを政宗に話していない。 戦場ヶ原のことも、千石のことも、阿良々木暦のことも。 「すまない」 神原は恐れているのだろう。 仲間のことを話せば、政宗が彼らを助けるかもしれない。 それは政宗に余計なカリを作ってしまう。 「……今の話は忘れてくれ」 神原の左手には、包帯で隠されているが、猿の手になっている。 人を惑わす妖怪のようなもの――怪異『雨降りの悪魔』(レイニー・デヴィル)の手だ。 『雨降りの悪魔』は、人の魂と引き換えに三つの願いを叶える。 願いを全て叶え終えた人間は、生命と肉体を奪われてしまうのだ。 「Take it easy. (気楽になれよ) どうした? 」 神原はかつて二回、願い事をしている。 色々あって現在は、『雨降りの悪魔』の効果も沈静化しているが、神原には相当の負い目になった。 誰かにカリを作ることが、少なからずプレッシャーとなっているのだろうか? ◇ 「見てくれ、あれが鉄道だ」 トンネルの先まで伸びた線路を指差して、神原は政宗の現代文明の力を紹介した。 事前に地図を調べていた彼女は、交通手段の仲介が、政宗の信頼を得る上で一番てっとり早いと考えたようだ。 「 どんな馬屋かと思えば、人っ子ひとりいやしねぇ」 「言われなくともわかっている。馬にまたがって早くどこかにイきたい気持ちは察するが、そうガッカリするな。 というより、筆頭はそれ程までに跨るのが好きなんだな。安心してくれ。しばらく待っていれば、ビッグな馬がやってくるぞ」 駅を目標に、神原たちはBダッシュに匹敵するスピードで山道を駆け抜ける。 「ピィィィィィーーーーーッ!! 」 けたたましく響く高周波。 政宗の指笛だった。 「Why? 例の馬はちゃんと調教されてんのか? 主人の呼び鈴に応えられねぇたぁ……」 「はっはっは。彼はじゃじゃ馬なんだ。笛を鳴らした所で――」 ――ボッ 政宗が呼んでからその間わずか1秒足らず。 気圧差による対流の開放に、空気が叫ぶ。 信じられないことだが、じゃじゃ馬は絶妙のタイミングでトンネルを飛び出してきたのだ。 「Hey! こいつぁまたglobalなじゃじゃ馬じゃねぇか! 」 「驚いたな! なんというミラクル☆トレインなんだ。人工知能でも入ってるんじゃないか? 名前を着けるなら、そうだな……『中野陸』! おそらく彼が私たちを呼んだのだ」 電車に中の人などいない! 神原の妄想がまた始まった。 戦場ヶ原ひたぎの声を出す列車が生まれたら、きっと神原は毎日乗車するだろう。 そして車内の鉄棒に体をこすり付けて、桃色の吐息と声を出しながら、色々なものを漏らしていたに違いない。 ――プアァァン 「Ok,OK……もうすぐご主人様が鐙を踏んでやっからな」 「む。まずいぞ筆頭! 賢者タイムを考慮しても、我々が乗り込むには時間が足りない」 そのスピードは馬といい勝負かもしれないが、スタミナは馬の何十頭分あるのだろう。 勇猛果敢に線路を走っていた列車は駅に到着した。 しかし駅のホームから神原たちがいる場所までの距離は、乗車するにはやや遠い。 おそらく、神原がホームに着くころに列車はホームを去ってしまうだろう。 「乗り込む? Holy shit!(まさか) 」 だが、それは―― 「馬は跨るもんだろ。 戦国乱世を生きる武将に、従えられない馬はねぇ! 俺の知ってる奴らなら、これぐらい朝飯前だぜ。You,See? 」 走っていたのが神原だけの時の話だ。 ◇ 「奥州筆頭・伊達政宗、武装騎馬、got it!(獲ったり!) Ya-ha-!」 列車の上に胡坐をかいて座る政宗は、高らかに笑う。 そして、ふと己の腰に巻かれていた縄に気がついた。 「いや。お見事。お見事。私にはやはり先見の明があるな。 いずれ来るであろうフットーに備えて、筆頭と私を繋げておいたのだ」 列車に乗る際にぶつけたらしく、神原は頭をさすっていた。 いつの間にか筆頭をロープで繋げていたらしい。 相変わらず無茶なことをする。 でも。その図々しさと持ち上げっぷりとエロさが神原駿河の魅力なのだ。 「Shit!……ま、いいや。 神原駿河、もうアンタの好きにしな」 「いや。最高にスリルを味わえたぞ。肉体から魂が引き剥がされるようなスピード。 ほとんど宙に浮きっぱなしで、時折着地するのがやっとだったよ」 今はまだ政宗に隠し事をしているが、それは彼を信頼したいという裏返しでもある。 しばらくは血迷った真似に走る事はないだろう。 たまった感情をいつか爆発させなければいいのだが。 「ところで筆頭、盗撮プレイはお好みか? 実のところ、私はさっきから濡れっぱなしなんだ」 「Ha!今度はどんなjokeだい? 」 ……人が心配してやってるのに。 やはりさっさと本編に戻るべきだった。 ごらんのありさまだよ! 【B-4/列車の上/一日目/深夜】 【伊達政宗@戦国BASARA】 [状態]:健康 [服装]:眼帯、鎧 [装備]:田井中律のドラムスティク×2@けいおん! [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1(未確認) [思考] 基本:自らの信念の元に行動する。 1:主催を潰す。邪魔する者を殺すことに抵抗はない。 2:信長、光秀の打倒。 3:神原は変態。馬の件は嘘じゃなかったし、とりあえず泳がせとこう。 [備考] ※参戦時期は信長の危険性を認知し、幸村、忠勝とも面識のある時点からです。 ※神原を完全に信用しているのかは不明。城下町に住む庶民の変態と考えています。 ※列車を馬と勘違いしています。 【神原駿河@化物語】 [状態]:健康 腕に縄縛紋あり テンション↑ [服装]:制服 [装備]:縄@現実 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(未確認)、神原駿河のBL本セット [思考] 基本:殺し合いをしたくはない。 1:出来れば戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦と合流したい。 2:政宗と行動を共にする。 [備考] ※アニメ最終回(12話)より後からの参戦です ※政宗には戦場ヶ原たちの情報、怪異の情報を話していません。 ※政宗を戦国武将の怪異のようなもの、と考えています。 ※彼らが乗った列車にはルルーシュ@コードギアスが乗っています。 列車が出発した後に天井に飛び乗ったので、ルルーシュが気づいているのかわかりません。 時系列順で読む Back 理由 Next 今は亡き王国の姫君 投下順で読む Back 衣 龍門渕のロリ雀士 Next ひたぎブレイク 018 モンキー&ドラゴン 伊達政宗 076 結ンデ開イテ羅刹ト骸 018 モンキー&ドラゴン 神原駿河 076 結ンデ開イテ羅刹ト骸
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326 :名無しさんなんだじぇ:2011/04/27(水) 01 00 08 ID OZwItEcE とーか 「ついに!ついについについについについに!咲第八巻発売決定ですわ!」 部長 「6/25かぁ。まだまだ先ね。でもこれで私とゆみの馴れ初めも見られるわけね」 とーか 「わたくしの入浴シーンと華麗な普段着も堪能できましてよ!」 かじゅ 「あぁ、あと嫉妬に狂ったモモの人魂化もだな。しかし五月は丸々休載、か。一か月半は流石に長いな」 美穂子 「…。でもどうして七巻発売から一年二カ月もかかったんですか?ストック的には去年の十月には貯まっていたはずですよね」 池田 (キャプテン、最近なんとなく怖いし・・・) カイジ 「まぁ色々と事情はあるんだろうさ。これとかな」ピラッ とーか 「ガンガン本誌で小林立&五十嵐あぐりの新連載開始?!」 部長 「ヤングガンガン六月増刊号で外伝掲載&巻頭カラー&表紙&本誌連動お風呂ポスター三種?」 かじゅ 「確か六月第三週掲載号はカラーになる予定だったような…」 池田 「例年通りだと最新刊の各店舗特典も描き下ろしだし!」 美穂子 「一か月以上空くとはいえ、対応しきれるのかしら…」 一同 「うーん…」 327 :名無しさんなんだじぇ:2011/05/04(水) 03 45 40 ID J91tpgz6 部長「そういえばゆみ。貴女、本誌読んでるのね」 かじゅ「あぁ、やはり久のその後は気になるからな…」 部長「悪かったわね、こんなところで死んでて」 かじゅ「済まないが、甘えるなら他を当たってくれ」 部長「ゆみに甘えていいのはモモちゃんだけだものね~」(ピラッ かじゅ「なっ―――?!それは本誌付録のモモのクリアしおりッッ!」 部長「説明的な台詞ドーモ。やっぱり好きな子の付録が付いてたら買っちゃうわよねぇ?」 かじゅ「か、返せっ!久!」 部長「ほーれほれほれ~」 池田「まんまと遊ばれてるし」 とーか「でもおかしいですわね?加治木ゆみがアレを懐から手放すはずはないはず」 カイジ「あぁ竹井もあの号は買ってるからな。多分自分のをあぁやってひらひらしてんだろ」 とーか「まんまと釣られたわけですわね。 いつもならそんなことないでしょうに本当に東横桃子のこととなると冷静さを失いますわね」 美穂子「アレ?でも私たち、いつもは買ってませんよ、ヤングガンガン」 池田(それはキャプテンのクリアしおり目当てだったからに決まってるし!)
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開幕乱世・無頼 ◆hqt46RawAo /開幕乱世・無頼 ――都市部。 そのエリアは、見る者によって受ける印象を異にする。 平凡なる世界に生きてきた者であれば、近未来的と表現するだろう。 高度に発展した科学技術の世界に生きてきた者であれば、先進的には感じられないものの、多少の違和感を覚えよう。 そして機動兵器が日常的に存在するような、ロボットにありふれた世界に生きてきた者であれば、それは至極見慣れた町の景色だ。 現在、D-1エリアとE-1エリアの境界線を越えた一団の中では、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとアリー・アル・サーシェスがこれに該当する。 平沢憂から見れば不自然なほど巨大な高層ビルや、圧倒されるほど大規模な町の発展、機動兵器が行動することが計算された道の作りであっても。 彼らはさほど気にとめない。日常に近しい景観だった。 一団は現在、島の西側にある都市部を南下している。目指す場所はひとまずエスポワール船と定めていた。 総合的に考えても、他の参加者と接触する候補地としては、おそらく戦闘のあったその場所が最上と言えた。 先の麻雀大会の最中における秋山澪の足跡を追う形。 例えニアミスになった場合も、そこから更に集団の足跡を追っていけば必ず行き当たるだろう。 それが主催者に対抗する集団か、はたまた殺人鬼のどちらなのかは分らないが。 「…………」 そのような意志で行動を開始していたルルーシュにとってすれば、目前にある状況変化は若干不可解なものであった。 進む道の景色は少しずつ変わってきている。 同じ高層ビルでも、朽ちて枯れたような廃ビル群から抜け出して、建てたばかりの塔が目に付くようになってきた。 しかし、ルルーシュにとってより不可解なのは、手元における変化である。 「さっそく予定が更新されるかもな」 手の平に乗せた、イヤホン型の通信機を見つめる。 それは着信状態を示していた。 両儀式へと試み続けたコールは遂に放送をあけても繋がらず。 半ば諦めていたところに、逆に向こうから通信が来たのだ。 何故今になって? という疑問を抱えながらも、ルルーシュは通話ボタンを押し込んだ。 『――――』 しかし暫く待ってみても、イヤホンの向こう側から声は無い。 ただ轟々と、風の吹き付ける音が聞こえていた。 「式、か?」 埒が明かない。 事を動かすために発した第一声。 それに応えた声は、 『ザザッ――ルルーシュ・ランペルージ、だな?』 ノイズに罅割れた声であっても、誰の物かを判断できた。 「その声……阿良々木暦、か」 肯定の代わりに名を呼び返して、ルルーシュはおおよその事態を察した。 まず優先したのは更なる現状理解。 ノイズに紛れて聞こえてくる音は機動兵器の駆動音だろう。 脳裏に断片的なキーワードが浮かび上がる。 阿良々木暦が操縦している訳でもなさそうだ、 ならば向こうは複数、 おそらく『あちら』も『こちら』を探していた、 スザクがいる可能性は比較的高い、 この男が交渉役に抜擢されたのは不可解、 等々。 まず、あちらがどこを移動しているかを知ることが第一に優先される。 通信状況が著しく悪い。急がなければならない。 余計な思慮を挟むことは無い。 優先順位の上のほうから消化するのが、彼の基本的な動き方だった。 「確認する、そちらは主催に反抗する集団か?」 『そうだ』 あちらはやはり集団。 ならばゲーム終盤である今の状況において、 黒の騎士団以外ではおそらく最後の対主催者集団となるだろう。 接触しない、手はない。 「そちらの位置は?」 『ザッ――E-2の北西から、E-1に入る』 酷く罅割れた音声。しかし冷めた調子の、簡素すぎる返答だった。 阿良々木暦がいかな思いをルルーシュに向けているか、少なくとも好感は無いと思われる。 むしろ悪感情を持っていてなんら不思議ではない。それが自然。 けれどイヤホンの向こうから聞こえてくる声は、全てを圧し殺しているように硬い。 感情を押さえつけ、必要なことだけを言い交わす意思。 ルルーシュとて同じであったが、阿良々木暦の人間像には一致しない。 何か、向こう側にはのっぴきならない事情でもあるのか、 とルルーシュが予測を立てたとき、告がれられた情報。 『そろそろE-1に入る――ザザザザッ』 ひとまず、得るべき理解はそれだけで十全にこと足りた。 ――良い。 予想以上に都合が良い状況だった。 こちらの集団と、あちらの集団。 双方が同時に移動していた中で、すれ違うか否か瀬戸際の、ベストなタイミングで通信が繋がったことになる。 「俺はエリアE-1の北東部に南下しているところだ。 そっちはこのまま西へ移動し続け、E-1に進入した後は北上しろ。 手順を間違えなければ、数分も経たないうちに、合流が可能になるはずだ」 後は兎も角、状況的に言って合流の一択。 流石に、むこう側も心得ているようである。 簡素な答えが跳ね返る。 『分った』 この時点で、ルルーシュにとって確認すべきことは全て為したといっても過言ではなかった。 此処から先は半ば余談だ。 後はもう、合流までの調節と、合流後の準備のみ。 『必要』ではなく『有用』なことを聞く。 「質問が二つある。 そちらに枢木スザク、両義式、秋山澪の3名はいるか。 いるならば何故お前が連絡を寄こしたのか、答えられるか?」 『一つ目は……、枢木は、いま手が離せない状態だ。両義式はお前と話したくないって言ってる。 それと……その秋山って子は……ここにはいない』 「そうか」 思いつく限り最良の結果だった。 戦力と目的、同時に果たせる。 これ以上に望むことは無い。 たとえ、最善はなかったとしても。 故に次に問うべきことを、冷静に検分する。 電波状況は著しく悪い。悪くなり続けている。 通信の断絶は時間の問題に思われた。 とはいえ語らずとも、近いうちに邂逅は果たされる。 ならばここで、残る時間に交わすべき言葉とは。 「スザクと、繋げる気はあるか?」 しばし、重苦しい沈黙が流れた。予想された反応。 スザクが、ルルーシュの知るスザクとしてそこにいるならば、周囲の者が繋がりを危惧することは当然でもある。 ルルーシュは待った、あちら側の反応を。 そして返された答えは漸く、感情の色を持っていた。 『その前に、こっちから聞きたい事がある』 それが阿良々木暦の答えだった。 拒絶でもなく、許可でもなく、ただ意志を通す、私情を通す。 『お前なら、首輪を外すことができるのか?』 一秒にも満たない僅かな間、逡巡する。 首輪の解除は可能である、今ならば出来る。 合流する際のカードになると考えていた情報だけあって、言うつもりは無かったのだが。 「できる」 ルルーシュは、嘘偽り無くそう告げた。 阿良々木の言葉に含まれていたもの。 今まで感情を抑えていただけあって、顕著に現れていた。 その強さがルルーシュに、ここでハッキリと言うべき台詞を選ばせた。 『そうか……、……そうなのか……!? 本当に?』 「ああ、可能だ。お前の出かたにもよるがな」 『…………』 「怒るな。当然のことだろう。俺達の関係は、少々複雑だからな」 『分ってる……』 首輪が不快だから、怖いから。 そういう単純な理由で阿良々木が焦っているわけでないことは、ルルーシュにも察せられる。 彼の声からは一刻の猶予もない、断崖を目前にした焦燥の念を感じていた。 しかしだからと言って、ここで甘さを見せるわけにはいかない。 交渉を望むならば迅速かつ慎重に、これは双方の集団全体のために必要なことだ。 その点で言えば、今焦りに突き動かされるこの男は話にならない。 「全ては合流後の話だ。もう一度聞こう。スザクに代わる気はあるのか?」 『……っ……もう一つ、ある』 「なんだ?」 すぐさま返された否定の言葉に、 眉を顰めて、続きを促す。 『平沢憂のことについて、だ』 そしてルルーシュは内心、深く嘆息した。 やはり、この局面でそれか。 それが、阿良々木暦の優先するべき事柄なのか。 合流を目前にして。 過去の遺恨を語るでもなく、こちらの思惑を探るでもなく、そちらの意志を述べるでもなく。 これからの事を考えるですらなく。 阿良々木暦はただ、他人を気にかけている。 たとえば、首輪を外さなければならない誰かを。 たとえば、救いを求めて彷徨う少女を、この世界でただ一人、本当の意味で気にかけていた。 ならば、この男は、善人(どく)だ、と。 ルルーシュはそのとき、理解した。 この阿良々木暦という人間のあり方を知った。 辟易を滲ませて、確信する。 「そうか」 ならばもう、先に待つものは断絶と拒絶、それだけだろう。 決して分かり合えないという、現実が待つのみだ。 ルルーシュは通話を打ち切ろうと、指を伸ばし。 『それが終われば、枢木に繋ぐ』 もう一度、嘆息して。 「なら続けろ」 阿良々木暦へと、先の見えた会話の続きを促した。 ■ ■ ■ ■ 「これにて、戦闘準備終了っとぉ……! よぉーやく一息つけるってもんだぜ」 ぐぐぐっと身体を伸ばして全身をほぐし、脱力ついでに腰を下ろす。 ホバーベースの甲板にて、アリー・アル・サーシェスは風を浴びながら胡坐をかいていた。 緩やかに朝日が登っていく蒼天と、日に照らされる都市が反射するキラキラとした光を、涼しげな表情で眺める。 リラックスした体で、組んだ足の上に置いたデバイスを、画面も見ずに操作する。 「いー風だ。やっぱ一日の始まりは朝からっだなー……あ?」 朝飯をたんまりと平らげた満腹感を持て余すように弛緩していた表情。 それが、ぴくりと反応する。 緩んでいた丸い頬と、爪楊枝を咥えていた口元が、瞬時に引き締められる。 唯一、瞳だけは元よりギラつきを失っておらず、自然な動作で視線を空からデバイスへと移し変えていた。 「……ほおほお、やっとかい?」 デバイスの画面。 先ほどまで表示していた、経路を確認するためのマップが消えていた。 代わりに映し出されていたものは、見知った文字。 ――着信アリ『"あちらがわ"』 「よっ、大将。久しぶりだな」 期待を寄せながらコチコチとデバイスを操作し、本来の雇い主からの指令に応答する。 デバイスに映し出される雇い主の姿。 それは劣悪な電波環境の中で歪んでいたが、本質的には問題なく表示されていた。 募る思いを込めて、言葉をかける。 「待たせてくれやがってよぉ?」 現在サーシェスが属しているチームは、決してサーシェスにとって悪いものではなかった。 寧ろ良い、少しばかり気に入っている。 仮の雇い主は付き合いやすい男だったし、あの哀れな少女は弄りがいがあって面白い。 居心地の良い空間だ。仮宿としては理想以上に良物だった。 しかし、サーシェスとしては、そろそろ動きが欲しい頃合である。 居心地は悪くないが、このままでは退屈してしまいかねない。 その前に、始まって欲しい。次の戦端を、開いて欲しい。 胸中で、再び燻りだした戦場への想い。 そんなサーシェスの心情を読んだかのように、クライアントからの要望が届いたのだ。 「こっちは律儀に働いてたってのによ、連絡もしねーで何やってたんだ? 腹でも壊してたのかい?」 軽口交じりの文句とは裏腹に、口元は良い意味で歪んでいる。 届く指令の内容を見るまでも無く、血の臭いが香ったからだ。 「――やあ。確かに、久しぶりだね」 「ちゃっちゃと用件を頼むぜ? なにやら通信状況もよろしくねえ」 「そうしようか。今回、君には二つほど伝えることがある。 一つは、称賛。もう一つは注文。これは同じ件に関することなんだけどね」 画面の向こうの人物から伝わる調子は、特に前回までと変化した様子は無かった。 変わったことと言えばその姿がよく見えないという一点だけだろう。 「面倒くさい言い回しだが、称賛ついでに注文をくれるってことか、はっ、ありがたいこった」 「ああ、称賛を受け取るついでに役割を果たしてくれってことさ。分るだろう?」 「了解だ。大将のそういうところは嫌いじゃねえよ。で、具体的には?」 「まずは、『例の件』について、よく働いてくれたね。あれで問題ないよ」 「まーな」と、サーシェスは苦い感情を隠さず含ませて返答した。 放送前に下された任――そして先ほどやり遂げた『その件』に関して。 実際、サーシェスはあまり良い印象を持っていない。 それは限りなく茶番に近い、くだらないやり取りだったからだ。 俺を使うなら戦場をよこせ。 そういう苛立ちが無かったといえば嘘になる。 「けどよ、大将。旦那……ルルーシュは普通に気づいてるぜ? 大将の意図に、だから試すこともしねえ。首輪は外さねぇ。 ていうかよ、あんなもんあからさま過ぎて怪しく思わねえほうがおかしい」 「だろうね。もちろん、彼は馬鹿じゃないし、それくらいの察しはついているだろう」 「だったら、何故に?」 「それが狙いだからさ。僕の意図はそこじゃない。 僕がやりたいことは伏線、保険、先手、っていうやつさ。君は何も危惧する必要は無いよ。 万事は予定通りなのだからね」 「それならいーけどよ。いや、しょーじき俺は別に何が起ころうと構いやしねぇし」 傭兵はカラカラと笑いながら言い切った。 仮の雇い主どころか、大本の雇い主に何が起ころうとも、それが楽しめるなら構わないと。 年端も行かぬ少女の破顔は、それだけを切り取れば無邪気で悪戯っぽい、微笑ましいものだ。 されどその細められた目、目蓋から覗く冷たい眼光は、まるで射すくめるように鋭く、喰らいつくように獰猛。 獣であり、狩人である。 それが肉体が変質してもなお変わらぬ、アリー・アル・サーシェスの本質だった。 「僕も君のそういうところは嫌いじゃない」 それに、クライアントもまた苦笑いを返しながら、朗らかに答えてみせる。 「そいつぁーありがとよ」 「で、だ。君には働きに見合った報酬を渡そうかとね」 働きによっては、武装面の支援もある。 サーシェスはそんな言葉を思い起こす、が。 「いらねーよ」 即決で、断った。 アレは傭兵の仕事ではない。そんなものに報酬はいらない。 プライドというものが、ある。自分で定めたルールがある。 例えそれが、戦争が好きで好きでたまらない、人間のプリミティブな衝動に準じて生きる最低最悪な人間であっても。 最低には最悪なりの、矜持というものが在るのだ。 だからそんなものよりも、今は戦争が欲しいのだ、と。 「そう言わずに」 だが、声は含み笑って続けた。 「もう少し聞いて、それから考えて欲しいね。 いやなに別にたったアレだけの仕事で、君を有利にしようなんて僕も思わないよ」 雇い主は、取引の内容を語り始める。 「これは、そうだな。ボーナスミッション、とでも思えばいい。 言ってみれば、余興さ。 僕としても、ちょっとしたサプライズイベントだったんだ。 ならば、単純に処理するよりも、いっそゲームに組み込んだほうが面白いだろう?」 サーシェスは暫し黙し、その意図を徐々に理解して、更に続きを促した。 「つまり遊びを思いついたってことか。 ま、いいさ、聞かせてみろよ」 ■ ■ ■ 『お前は最終的に、あの子をどうするつもりだ?』 少年の声で投げかけられた質問に、男は淡々と答えた。 「どうもしない」 『どうもしない……だって?』 その言葉が何を意味しているのか、少年は理解に数秒の時が必要らしい。 故に男は重ねて告げる。 『ああ、俺はあいつをどうするつもりもないさ。 俺はあいつに何もしてやらない』 それはつまり。 加害者の自白であると同時に、罪の放棄を意味していた。 相対する少年は当然、怒りをもって応える。 『……ふざけるなよ。お前は分っているんだろ? あの子がいまどんな状態か。 あいつは大切な人のために人を殺して、なのに大切なモノを失って……。 そんな子を利用しておきながらお前は……なんの責任も取らないつもりなのか?』 少年は断罪する。男の罪を責める、正しき声を上げる。 「だとすれば、お前こそ、何が分る?」 しかし男は、断罪の声を更に斬って捨てるように、冷めた声で返答した。 『なん……だと……?』 「あいつの、何を知ってる? 何を理解してやれる?」 『僕は……平沢を……』 「あいつを助けたいと、お前はそう言うのか? だとすれば、お前に何が出来る? 考えてみろ」 男の声には、以前少年に振舞ったような、作り物めいた調子は既にない。 どこまでも重たい言葉、沈み込んだ声色はまるで鉛のようだった。 「無理だな。お前にはあいつを救えない」 『そんなことがお前に……!』 「分るさ。お前はあいつを何も知らない。理解してやれない。 だから何も出来ない。殺されてやるくらいが関の山だろうさ」 男の言葉は真実だ。 相対する少年にもそれは分るのだろう。 少年は何も知らない。知らすぎている。 関る期間が、足りていなかった故に。 『…………っ』 何も言えず、少年は悔しげな声を漏らす。 しかし男の口ぶりからは、理解が伺えた。 いま話題となっている一人の少女への理解だ。 相対する少年が知らないことを、分かっていないことを、男は知っている。 そのくせ、諦観していた。全てを諦めていた。 だからより悔しげな念が、少年の言葉から滲み出る。 『だったら、お前が……救ってやれば……!』 それは、血を吐くような思いで発せられた言葉に聞こえた。 己のプライドを自らへし折るような、苦行だったのだろう。 「それも無理だな。俺はあいつを助けない。救わないし、救えないんだよ。 まだ分らないのか? もうこの世のどこにも、あいつを救える奴は残っていない」 それでも、男の声は変わらなかった。 無情、冷酷、冷徹な言葉だった。一切の温情を撤廃したような。 容赦無き、言葉の羅列。 「手遅れなんだよ。お前は遅すぎる。 彼女はあまりに失いすぎて、そのくせ奪いすぎた。 そして、向き合うことに、何の覚悟も持っていない」 『……くそが』 男はそこまで、理解しているくせに、 知ったような口を聞けるくせに、何もする気が無いと言う。 それこそが、少年には許せない。 『なあ……お前は……本当にお前じゃ駄目なのか? お前は知ってるんだろ? 理解してるんだろ? 平沢のことを。 それでもお前は本当に、何も思わないのか?』 「…………」 男はその質問に、答えず。 「何度も言わせるな。俺は、平沢憂を『どうもしない(犠牲にする)』んだよ。 ……ただ、それだけだ」 それは決裂の言葉だった。 何より深い、断絶の瞬間だった。 相対する少年も、この男も、分かり合える日は来ないのだと確信する、一撃だった。 『そう……かよ……』 「そうだ」 『だけど僕は認めない、諦めない』 「そうか」 相対する少年の声は揺るがなかった。 男が諦めるならば、勝手にすればいい、と。 それでも己は、全てを諦めない。 男と戦う事すら辞さない覚悟だと、告げていた。 『――それでも、無理だろうさ』 固めた決意を、告げられて、 しかしもう一度、男の否定が下された。 当然、相対する少年も、引き下がるつもりは無い。 男とて、それは既によく分っているのだろう。 だからこれは、誰かに向けた言葉ではない。 最後に男は、誰にともなく、呟くように。 それは願いに似た、ただ消えていくだけの言葉だった。 『お前には、あいつを助けられない。なぜなら――』 通信は、そこで途絶えた。 ■ ■ ■ 「ルルーシュさん」 その声に、操縦桿を握っていたルルーシュは背後を振り返った。 イヤホンを耳から離し、操縦席のすぐ後に立っていた少女と向き合う。 そこには、パイロットスーツを着込んだ平沢憂が立っていた。 「どうした、憂?」 「ちょっと休憩することにしました」 「そうか、そうだな。根を詰め過ぎて本番で力を発揮できないようでは困る。いい判断だ」 彼女は先ほどまで紅蓮の操縦練習に明け暮れていた様子だった。 少しだけ疲れた面持ちである。 褒められたことが少し嬉しかったのか、 ふにゃりと笑顔を浮かべて操縦席の背後のソファに腰掛けた。 「ふぅ……熱いです」 パイロットスーツを少し緩め、憂は火照った顔を手で仰ぐ。 一際狭い紅蓮のコックピットの中にいたせいか、髪の毛の先まで汗びっしょりの様相であった。 既に根を詰めすぎている。ルルーシュにはそう感じられた。 「さっき、式と通信できたよ」 「そうですか、式さんと……」 憂は喜んだ様子であったが、ルルーシュの言葉から言外の意味も感じ取ったのだろう。 同時に少し、残念そうな面持ちでもあった。 「やはり、澪が気がかりか?」 「い、いえ……あの、それで、どうなりそう……ですか?」 指摘されて、慌てたように取り繕う憂を見ながら、 ルルーシュは立ったまま、操縦桿に背中をつけた。 「式は現在、とある集団に属しているらしい。 南下を継続すれば、いずれ遭遇するだろう。 その時までに向こうの集団への対策を練らなければな」 「はい。分りました。それじゃ私は何をすればいいですか?」 「…………」 「ルルーシュさん?」 「お前は……」 「はい?」 「お前は、何も聞かないんだな。出会う集団についてとか、なんで通信機が繋がったのか、とか」 「それはだって、そういうのは全部ルルーシュさんに任せてますから」 「……そうか」 「はい」 少女の表情に迷いの色は無い。 屈託の無い顔つきで、ルルーシュを見つめてくる。 対して、ルルーシュは憂の顔から視線を離して、天井を仰ぎ見た。 やがて長い間を開けて、ポツリと、まるで何かの間違いのように、感傷的な呟きが零れ、 「…………憂」 「なんですか?」 「……いや、なんでもないよ」 操縦桿から背中を離す。 再び少女に背を向ける。 それは会話の終わりを意味していた。 何一つ結果を出さない。中途半端な終わり方。 けれどルルーシュはそれを良しとして。 「準備しておけ、もうすぐ合流し――」 「聞かせてください」 無いと思っていた切り返しに、もう一度背後を振り返る。 「……憂?」 「いま、なんて言おうとしたのか。最後まで、聞かせてください。……駄目ですか?」 何の予感を得たと言うのか。 請うような目で、少女は見上げていた。 「……大した事じゃない」 「聞きたいんです」 縋るような目で、少女は言う。 「お前……」 けれど曇りなき目で、少女は聞いていた。 それは聞かなければならないことなのだと、信じているように。 透き通った視線。 「…………」 「本当に、大した事じゃないんだが……」 「…………それでも、いいから」 この目、おおよそ好むものではない。 麻痺していたはずの感覚で、久方ぶりにバツの悪さと言うものを感じながら。 ルルーシュはやはり憂から目を逸らして、やがて観念したように言った。 「…………なあ、憂。……お前は……」 「はい」 「どんな世界が好きだ? たとえば世界は、どんなふうに変わればいいと思う?」 質問の意図はあまりに抽象的で、 そのくせ意志はどこか筒抜けのようで、 だから言いたくなかったその言葉を、口にした。 「…………」 そして返される答えは、 「ん……ごめんなさい。 世界とか、私にはスケールが大きすぎて、すぐにはハッキリした答えを返せないみたいです……」 頬をかきながら、苦笑い交じりの、予想通りだった。 聞かなければよかったと、ルルーシュはもう何度目かも分らない自嘲を浮かべる。 こんな漠然としている質問を、ガランドウの少女に答えさせてどうする。 そんな仕打ちをすることに何の意味があったのか。 彼女とルルーシュは、そもそも生きてきた世界すら違うと言うのに。 「だろうな」 何を考えて、この質問を口にしようとしたのか、自分でも分らなかった。 頭の痛みで呆けていたのだろうか。 などと考えつつ今度こそ、ルルーシュは会話を終わらせようとして。 「でも……」 少女の言葉には、まだ続きがあったことを知らされた。 「世界なんて、変える必要あるんですか?」 「――――なに?」 「私は……思うんです。ずっと、幸せな今日が続けばいい。 私と、私の好きな誰かが傍にいて、互いに優しければそれだけで、十分なんじゃないかって……」 拙く放たれたその言葉に、 ほんの一瞬、言葉を、失った。 「せめて、大切な物を大切だって思えれば、毎日が辛くても、大変でもいい。 隣にいる誰かが、隣にいる誰かに少しでも優しくしてあげられるなら。 たとえ、どんな世界でも、きっと私はそれだけで幸せを感じられるから……」 壮絶な概視感に、眩暈がした。 「…………」 「なんて……あははっ……綺麗ごと、ですよね。しかも自分勝手。 ホントはそれだけで満足できるわけがなくて、 優しくなれない人もいて、優しくなれない時もあって。 それに誰もがずっと、大切な人と一緒に居られるわけじゃない……」 その言葉と、とてもよく似た世界を望んだ少女が、似たことを言った少女が、かつていた。 ルルーシュの一番近い場所に、一番に守りたい存在として。 そしてもっとも恐ろしい、一番最後の敵として、立ちはだかった少女の理想。 「でも、ルルーシュさんは優しいです。だから、私はいま……、……?」 咄嗟に隠さなければと思う、何かを。 しかし内心に衝撃を受けていたルルーシュよりも、 ルルーシュを見上げる憂のほうが、なぜか驚いた表情を浮かべたまま固まっていた。 「……どうした?」 掠れた声で、今度はルルーシュが取り繕う。 「あ、いえ、ルルーシュさんがそんな顔するの、始めてみたから」 ふ、と。 引き寄せられているかのように、憂がソファから立ち上がる。 そのまま数歩、ルルーシュの目の前まで歩み。 この先もずっと記憶しようと言うように、じっとルルーシュの表情を覗き込んだ。 「……」 「……」 沈黙の中。 手が、ゆっくりとルルーシュの頬へと伸ばされる。 まるで撫でるように、労わるように、その小さな指先が触れる、寸前だった。 「――それじゃあ、ルルーシュさんは……」 見上げる少女は、相変わらずの透き通った目で、質する。 ふと、なにかに気がついたように。 「ルルーシュさんは、どんな世界を、望みますか?」 かすめていく、小さな音で。 彼女の存在と同じくらい、消えそうな声で。 それがあまりにも、儚くきこえたから、だろうか。 「……俺は」 気がつけば、勝手に喉が震えて、言っていた。 彼女に告げるはずの無かった、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの、答えを。 「望む世界に、名前はない」 それは、彼が戦い抜いた果てに掴んだ、一つの解だった。 「なぜなら世界は……変わり続けるから」 幸せは固定できない。 苦しみは幾度も廻ってくる。 それを、それだけを、彼は長き戦いの中で、知っていた。 「過去にある幸せも、今の辛さも、全て大事だけど縋ることは出来ない。 俺には、留まることが、許せなかった」 昨日に帰ろうとした男がいた。 今日を留めようとする男がいた。 その二つを、かつて、彼は否定した。 「俺はただ明日が欲しかった。 時を止めたくはなかった。 そこに、その先に、続くものがあると信じたから――」 口を滑らせてしまった、その言葉。 もう撤回は出来ない。 なのに思ったより後悔は無く。 むしろ、理解できるだろうか、と少女を見やり。 「あし、た……」 ピンと来ない様子の彼女に、安堵を覚える。 それでいい、と。 漸くいつもの余裕が戻ってきたルルーシュは、軽い苦笑を浮かべて、肩をすくめた。 部屋を満たしていた硬い空気が、幻のように霧散していく。 「なんて、な。まあ、そんなところで雑談はお終いだ」 これで今度こそ、余計な言葉は仕舞いだ、と。 少女の肩を、片手でそっと掴んで、回れ右。 操縦室の出口の方向に、憂の身体を向けさせる。 「ちょ、ちょっと……ルルーシュさんっ……!?」 「ほらほらのんびりしている暇はない。一時間もしないうちに合流だぞ。さっさと着替えて来い」 「そんなっ、もぉ、中途半端ですよー!」 有無を言わせず、ずいずい押して、廊下にむかって歩かせる。 腕を気遣ってか憂は渋々と歩き出すものの、首だけ振り返り抗議しはじめて。 「ちゃんと説明してくださ――」 どこか緩んだ雰囲気が流れ始めていた。 その時だった。 『――――ザザザザザッ!!!!』 ルルーシュの背後、 操縦席においてあったイヤホンから、大量のノイズが鳴り渡ったのは。 「「――!?」」 ルルーシュは眉を寄せ、憂は驚いた声を上げ、両者同時に振り返ってイヤホンに注目する。 間をおかずに鳴り鳴り響く音。 罅割れたノイズの渦中から発せられた声は―― 『一方――う―に遭遇した!!――西へむかうのは――う不可能――!! ――南のショッピングセンターから周りこんで行――から、そっちは南下――続けてく――!! ――頼む――一刻も早く――時間が無い――!!』 少年の、焦りに満ち満ちた声だった。 「ルルーシュさん、今のって……」 だが、それを察した憂の言葉が完遂する前に―― 「おい、やべえぞッ旦那!!」 ドアを蹴破る勢いで操縦室に飛び込んできたサーシェスが、 二人の前方にある外の風景を写すモニターを指差して、叫ぶ。 「見てみろ!!」 ルルーシュも憂も、それを同時に見て、同時に理解した。 戦いは、既に始まっている。 遂に戦場が、動き出しているのだと。 「奴かッ!?」 『もう一つの集団』は敵対する何者かと戦闘に入り。 そして今、ルルーシュ達の目の前には―― 「ああ、きやがったぜ!!」 進むホバーベース前方のビル街、並び立つ摩天楼の内一棟。 最も高い建造物の、その屋上に在る強大なるモノ。 日のもとであれば尚のこと、その深淵を見過ごせるはずが無い。 「織田……!!」 操縦桿を強く握り締めたルルーシュの発する、敵意の声を、 「信長ですか、あれが……?」 モニターを見上げたまま硬直した憂の、掠れた声が拾い、 「ああ、間違いねぇよ」 酷薄に笑んだサーシェスの、武者震いを含んだ声が肯定する。 「アイツがそうさ。あの化けモンが、な」 黒き渦である。 聳え立つ塔の頂点にて、空の群青を一画塗り潰して君臨する、膨大の黒点。 即ちそれは、覇者の軍勢に相当した。 一騎にして当千、当万、当億を超える規模の途方もない密度で凝縮されし魂魄。 其れはむき出しの闘志を収束し、煮詰めた地獄の業火そのもの。 故に誰もが知り、誰もが恐れ、誰もが敬いし男が一人、黒点の中央に立っている。 漆黒の武人。 曰く、魔王。 戦国武将、織田信長。 それがいまルルーシュ達の目前に立ち塞がる、底無しの闇の名であった。 「――即時」 対して、ここにもう一人、魔王と呼ばれた男は臆す事無く。 ただ一つの指令のみを、己が手足へと叩きつける。 それは巨大にして矮小なる艦内へと、荘厳に響き渡る開戦の鐘。 「対応するぞ! 戦闘開始だッ!」 「おうさ!」 「は、はい!」 かくして号令と共に、三者は動き出す。 生きるため。 戦うため。 それぞれの役目を果たすため。 ここに、第二の戦端も、その幕を開いていた。 【魔王狂想編・開幕 / Black Side--Start】 時系列順で読む Back ゲーム・スタート Next crosswise -white side- / ACT1 『PSI-missing』(1) 投下順で読む Back ゲーム・スタート Next crosswise -white side- / ACT1 『PSI-missing』(1) 298 前夜祭の黒騎士たち ルルーシュ・ランペルーシ 304 crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(一) 298 前夜祭の黒騎士たち 平沢憂 304 crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(一) 298 前夜祭の黒騎士たち アリー・アル・サーシェス 304 crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(一) 299 わたしとあなたは友達じゃないけど(後編) 織田信長 304 crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(一)
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贈る言葉 ◆LJ21nQDqcs わたし、福路美穂子は木陰で、未だ寝ている唯ちゃんを涼ませていた。 燦々と降り注ぐ陽の光は容赦なく大地を照らし、照り返しで地面そのものが眩しいくらいだ。 膝枕されている唯ちゃんは、時々誰かの名前を呟いているようだが、嬉しそうに微笑んでいる。 夢のなかでお友達と会ってるのだろう。 私は唯ちゃんの髪を撫でながらも、自分の中に嫉妬があることを否定出来なかった。 伊達さんは、片倉さんを前に胡座を組んでいる。 掛ける言葉も、何かしてあげることも、私には出来なかった。 逃れようの無い罪、そのものを目の前に突きつけられて、動揺していたと言うのもある。 だから放送まで一人にさせてくれ、という伊達さんの言葉は私にとっても有り難かった。 伊達さんの気持ちを置いて、唯ちゃんにかまっている私は、やはり酷い人間だと思う。 冷たく厳然とした死という現実から逃れて、 暖かい、生命そのものとも言える唯ちゃんに逃避していた。 逆に言えば唯ちゃんが居なければ、わたしはどうしようもなく泣き崩れていたかもしれない。 わたしは、少なくとも泣いて時間を浪費するよりは、唯ちゃんを気遣っている方が前向きであり、 ややマシな時間の使い方だ、と自分を騙していた。 ヴァンさんは、といえば腰を曲げながら、何をするでもなく帽子を胸に立ち尽くしていた。 わたしや、おそらく伊達さんからしてみれば重大事ではあるが、 傍から見ればやり過ごすべき茶番なのだろう。 ある意味、この場で誰よりも放送を心待ちにしているのかも知れない。 それにしても、 『ヴァン』 船井さんが注意するべきと言っていた14人の内の一人。 ヴァンさんで三人目ではあるが、その三人全てがやはり超人的な身体能力の持ち主だった。 恐ろしい明智光秀、瞬烈なる二連撃を見せた伊達さん、落馬しつつも怪我一つないヴァンさん。 ことに伊達さんの懐の広さは驚嘆に値する。 どう見ても異形のわたしをあっさりと受け入れ、超人であるヴァンさんもすんなりと引き込んだ。 それはわたし達がどんなタイミングで翻意したとしても、 十分に対処出来るという自信の裏返しとも言える。 突き抜けた強さとはそういう事なのだろう。 片倉さんを殺しながら、わたしを捨て置いた、あの眼帯の女もそう。 絶対的な力の差があるからこそ、わたしは見逃されたのだ。 いつでも殺せるから、と判断して。 明智光秀にしてもそうだろう。 闘技場から逃げるわたし達を追うことは、いくらでも出来たはずだ。 神様から貰い受けた"左腕"をもってしても、それだけのアドヴァンテージが、彼にはあった。 二人とも、いずれ遭遇した時、また見逃してくれるとは思えない。 生死は彼女と彼の胸先三寸であり、わたしなどはその荒波の中でさまよう一葉に過ぎない。 力が欲しい。 やはり、そう思わずには居られない。 力があれば、伊達さんのように泰然自若としていられるというのに。 こんな風に心を乱すこともなくなるだろうに。 華菜を、上埜さんを、片倉さんを失わずに済んだというのに。 そしてわたしが渇望し、唯ちゃんが熟睡し、伊達さんが胡座をかき、ヴァンさんが立ち尽くす中、 第二回定時放送が始まった。 ■ 出だしは前回同様、機械的すぎる少女の声から始まった。 ここまで感情を殺すことが出来るのだろうか。 最初の、あの龍門渕の部長さんが殺された放送の時、 遠藤という人は【人質】【ゲスト】などと言っていた。 インデックスと名乗る、この少女のことを【ゲスト】と読んでいたが、 この感情をなくした様子を見るに、わたしから見たらどう考えても【人質】に他なら無い。 拘束するのに面倒が無いよう、従順にするために感情を消したのかも知れない。 そう言えば船井さんは、闘技場の控え室でどうやらわたし達に薬を盛る予定だったようだ。 あの時、琴吹紬が事を起こさなかったら、もしかしたらわたしや唯ちゃんも、 あのように感情を殺され、船井さんにいいように使われていたのかも知れない。 わたしはどうでもいいが、唯ちゃんが利用されるのは我慢がならない。 やはり船井さんは殺されて当然だった。同情する余地は全く無い。 思考をたぐらせていると、進入禁止エリアが読み上げられる。 【A-2】【C-7】【D-6】 地図に書き込む。今回は前回と違い、施設は禁止エリアに入っていない。 ただD-6はホームがあり、これから列車を利用する際に不便が出るだろうことは予想出来る。 それにしても列車は復旧するのかしら?随分長いこと止まっているけど。 また、河を挟んだ向こう側、東側の真ん中を横切る形で禁止エリアが広がったので、 東側の南北に人が大移動するかも知れない。 D-5、E-5、E-6は回廊になった為、もしここで待ち伏せされた場合はかなり危険だろう。 この3エリアには近づかない方が無難と言える。 それにしても7×7の49エリアしかないのに、毎回の放送で3エリアも立入禁止になるとは。 たった二回の放送で禁止エリアは、かなり面倒な配置になった。 最終的には第16回放送、四日目の終わりには最後の1エリアで決着する形になる。 それまでに何としてでも、このくだらないゲームを止めなくては。主催者を殺さなくては。 そして死亡者が読み上げられて行く。 特に断りが無いので、おそらく第一回放送と同じく死亡順なのだろう。 船井さんと琴吹紬の名前が読み上げられた後に、三名の名前が続いた。 あの凶事から一時間も経っていない。 残り人数が激減しているというのに、死亡者数が変わらない。 つまり殺人ペースは確実に早くなっている。 均衡が崩れつつあるのだろう。 「注意するべき14人」も4人死んだ。 ここに居る伊達さんとヴァンさん、明智光秀を除けばあと7人。 超人14人が互いに殺し合っているのかも知れない。 B-3の城を崩した人も、その中に居るのかも。 あのようなパワーを叩きつけられたら、わたしなどは苦も無くこの世から消滅するだろう。 天江衣、東横桃子、阿良々木暦、張五飛、平沢憂、秋山澪 そしてあの人の名前は呼ばれなかった。 ホゥ、と一息つく。 唯ちゃんの妹である憂さんが無事なのは良かった。 田井中律、琴吹紬の二人を失い、秋山澪があのような状況にある以上、 憂さんの無事は唯ちゃんにとって一番の関心事に違いない。 わたしは自分の事以上にそれが嬉しい。 それにしても深堀さんが姿が見えなかったと言っていた、東横桃子はともかく、 肉体的には脆弱な子供のそれでしか無い、天江衣が生き残っていたことは意外だった。 わたしも唯ちゃんも秋山澪も、神様から貰ったこの"左腕"が無ければきっと死んでいた。 力の無いものがあっさりと死んでしまう。それがこのくだらないゲームだ。 ならば、天江衣はなにか強力な力を手にいれたのか、 それとも強力な庇護者を味方につけたのか。 あの悪夢のような場の支配を思い出す。 華菜を徹底的にいたぶったあの支配が、もし洗脳などに使えるのであれば。 投薬の必要もなく人を操れるのだとしたら、それは本当に悪魔のような力であろう。 そして、インデックスと名乗る少女は言葉を閉じ、マイクが切り替わる。 前回の放送と同じく、遠藤という男ががなりたてるのだろう。 あの不愉快な声は耳に障る。しかし放送には有為な情報も多い。 聞きそびれ無いようにしなくては。そして男の声が響きわたる。 ■ 『おおっと……! 待ってくれ、まだ終わりじゃないぞ……! こんにちは、諸君! 遠藤勇次だ……!』 ドクン 「え?」 脈打つはずの無い、わたしの身体に鼓動が響き渡る。 ドクン 違う、脈動は"左腕"。 そこから血が一斉に送り出されて 心臓が いや!やめて!わたしはそんな事望んでいない! ドクン 【 殺 す 】 "左腕"が一気に膨張する。振動する。鼓動する。 それにつれてわたしの身体も、黒い鼓動によって衝動が突き上げる。 そうだ。 主催者は殺さなくてはならない。 このゲームは殺さなくてはならない。 そう誓った。 そう願った。 それがわたしの望みだ! 「うああああああああああああああああああああああああああああ!!」 抵抗と歓喜と恐怖と殺意と諦観と興奮と絶望と。 全て渾然一体となったわたしの絶叫は、伊達さんやヴァンさんを振り向かせた。 ■ ヴァンさんや伊達さんが、どうしたんだと近寄ってくる。 駄目。 近づかないで。 わたしは今わたしじゃない。 だってこんなにも誰かを、今すぐ殺したくなっている。 何かの拍子で溢れ出した殺意が、周りの全てを蹂躙しようと奔走しようとしている。 どうやらその殺意の根源である"左腕"を必死に抑えるが、 そもそもわたしの身体が、わたし自身が殺意の塊となっている。 とても抑えきれるものではない。 そうか。 この"左腕"は神様からの贈り物なんかでは無かった。 それとは真逆の、あぁ、卑しいわたしにはむしろ相応しいではないか。 これは悪魔だ。 人を騙し、人を欺き、人心を惑わし、混乱をもたらす。 その為にわたしを生かしていただけだ。 滑稽な操り人形。 それがわたしだ。 このままでは唯ちゃんを守るどころか、重石にしかならない。 最悪わたしが唯ちゃんを殺すことになりかねない。 駄目だ。 それだけは駄目だ。 わたしが全てを失って、そしてようやく掴んだ希望を、 わたし自身が摘んでしまうだなんて、そんな馬鹿なことが、あっていいはずが無い。 まだ自由がなんとか効く右腕で傍らにある刀を鞘走らせる。 思考に雑音が混じる。 『殺ス』 駄目だ。殺すのは、殺されるのはわたし自身だ。 『殺ス殺ス殺ス』 違う。この殺人衝動をこそ殺す。 『殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス』 嫌だ、殺したくない! 『殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス』 今すぐ刀を首に押しあてなければ。 『殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス』 早く!早く! 『殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス』 ごめんね、唯ちゃん。わたしは馬鹿な人間でした。 あたなのように太陽のような、全てを照らす人と一緒に居られなくて当然な、 馬鹿な、滑稽な、人間でした。 だから 「殺ス!」 わたし自身を! ◇ だりぃ。 馬に騙されて、ダンにも会えずに、死体と一緒に旅をして。 そんで振り落とされて、地面を転がって、身体起こしたらしんみりした雰囲気。 弔いっていう神聖な時間は結構だ。 だが俺も急いでいる。 はええ所宇宙開発局やらに行って、ダンを取り戻さなきゃならねーんだ。 まぁこのなんとかいう旦那も、どうとかいう女も、悪い人間じゃなさそうだし、 俺を騙した馬にも天誅やったみたいだから、いちいち邪魔をする気はないが。 あ~、陽が照りつけてあちぃ。 しかし、一本しか無い木陰を占領するとか、この女もなかなかいい度胸してやがるな。 寝てる人間を陽に晒しちゃそりゃまずいがよ。 時々扇いで風送ったりして甲斐甲斐しいなぁ、おい。 気がつきゃあ、俺をほっぽり出した馬の野郎も起き上がってやがる。 まだ気が収まらねぇから、あとでしめておくか。 お、放送が始まった。 これが終わったら、そろそろお暇するか。 14人か、結構死んだな。 胡座かいて座ってる旦那がなんとなく反応したみてぇだが、俺には関係ない。 さて、行くかってな具合でディバッグを拾った、その時に異変は起こった。 「なんだぁ、こりゃ」 風が逆向きに吹いている。 つーか一点に向かって集まってきてやがる。 一点。 つまりあの女のところへ。 どういう理屈かを考えるのは苦手だ。 ただこれがやばい事態だってのは分かる。 どんどんと、あの女の左腕が異様なパワーを蓄えてるのが分かる。 「こりゃすげぇな。力とパワーとストレングス、三つ全てを兼ね備えようとしてやがる」 「それ全部同じですよね」 やかましい!と言おうと横を見ると、なんだ馬か。 「馬だけに馬いツッコミ。なるほど、いい感性をしてますね」 「ごちゃごちゃうるせェ!」 見ればあの女、殺る気満々の癖して、刀を自分の首に押し当ててやがる。 なんでこの島の女は、みんなめんどくせぇ奴ばっかなんだよ! ◇ あと一息で終止符を打てるという所で、わたしはヴァンさんの武器で右腕を拘束された。 絶妙な力の加減だろうか、右腕から刀がポロリと落ちる。 と、同時に背後から伊達さんがわたしを羽交い締めにする。 だが"左腕"はわたしの意志を既に無視して、悪あがきを続ける。 二人が何事かを叫んでいるようだが、"左腕"を抑えこもうと集中するわたしの耳には入らない。 ヴァンさんが今度は"左腕"を拘束しようと武器を飛ばす。 しかし"左腕"はヴァンさんを一本釣りし、投げ飛ばした。 わたしの意志は、既にわたしの身体の中に閉じ込められていた。 もはやわたしは自分で体を動かすことも出来ないのか。 これではもう、私は死んだも同然なのではないのか。 いや、それ以前に闘技場で毒を飲んだ時、わたしは死んでいた。 ならば今のわたしは残滓でしか無い。 あぁそうだ。わたしは既に死んでいたんだ。 伊達さん、もう手加減せずにわたしの首をへし折って下さい。 わたしは既に死んでいるんです。 これ以上、生きている人たちに迷惑を掛けたくない。 だから、唯ちゃんを誰にも渡したくないから、みんな死んで下さい。 そうだ、みんな死んでしまえば、唯ちゃんはわたしだけのものになる。 そうすれば、 ?! まさか。 まさか、わたし自身が望んでいたというの? 参加者全てが死ぬことを。 第一、唯ちゃんをわたしだけのものにしてどうしようというの? 分からない。もう、自分自身すら分からない。 もうイヤだ! 上埜さん、華菜、片倉さん、 わたしを助けて! こんなわけの分からない心のまま、死にたくない! ◇ チッ、なんてぇ力だ。 本気出したら対抗出来なくもねぇが、俺は引っ張られるままに空中に放り出された。 旦那が羽交い絞めにすることで、ほぼあの女の動きは止められているが、 それだけでどうやら手一杯のようだ。 人ひとりを傷つけずに拘束するのは、結構な力量差が必要だからな。 ましてや頑丈な野郎相手ならいいが、どうみてもあの女は体自体は普通の女だ。 旦那が遠慮して本気を出せないのも仕方のない話だろう。 こうなったら、この隙にあの女の意識自体を断ち切らねぇといけねぇか。 とりあえず、着地せんとっと思って足元を見ると、あのバカ馬が落下地点に居やがる。 いいタイミングだ。 人馬合体! 「気がきくな!ただの喋る馬じゃないな、お前」 「こういう無茶なことする人には慣れてますから」 「よし、んじゃいくぜぇ!」 無茶な機動と軌道で、無駄にものすごいスピードを出して突っ込む。 狙いは羽交い締めにされて、無防備に頭上を泳ぐあの女の左腕! どうやらあの異形は頑丈っぽいし、なんだか分からねぇが危ないっぽいからな! 「チェストおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 ものすごい速さと、俺の力によって、蛮刀は白銀の閃光となって炸裂する! ゴィンという間抜けな音とともに、女の左腕をぶっ叩く。 その衝撃か、女の動きは完全に停止したように見える。 ふぅ、と一息つく。どうやらこれでなんとかなるだろう。 と思って正面を向くと。 樹。 馬が急停止した反動で前方に放り出された俺は、そのまま樹に激突した。 このバカ馬、やっぱり許さねぇ! ◇ 「Shit!全く、揃いも揃って気を失いやがって」 俺は軽く肩をすくめて両手を上げる。 平沢唯、福路美穂子、ヴァン。 三人全員眠っちまってちゃ、俺が光秀の野郎を追えねえじゃねえか。 この福路美穂子って娘は少しはしっかりしていると思ったら、いきなり暴れ出しやがるし。 まったく神原駿河といい、福路美穂子といい、バテレンの娘はワケが分からねぇ。 しかも左腕に変な装飾でもするのが流行ってやがるのか? それにしては平沢唯の左腕には何も無いが。 まぁ幸い、誰も近づいてくる気配も無い。 途中までだが聞いた放送の内容を思い出す。 「真田幸村、本多忠勝、か」 二人ともどこまでも真っ直ぐな愚直なまでの武将だった。 あいつらだったら主催に対して真っ向からぶつかっていくだろう。 そして、生き急いじまったか。 ことに幸村とは再戦も果たしたかった。 しかし、感傷に浸る暇はない。 元々独りだろうが、主催の野郎を倒すと決めている。 (ならどうして、この三人を見守っておられるのです?) そりゃお前、害意を持っていない人間を、無駄に見殺しにする必要も無いからだろうが。 (あの福路美穂子は、明らかに害意を持っているように見えましたが) お前が守った女だからな。突然暴れだしたことについても本意じゃあるまい。 小十郎、お前も思ってもいないことを俺に聞いてくるな。 ン?小十郎? 俺は自分の言葉に驚いて振り向く。 そこにあるのは小十郎の遺体のみ。 Ha!俺もやけが回ったか。幻聴が聞こえるだなんてな。 (幻聴じゃありやせんぜ、政宗様) Okay。お前が言うんだったら、そうなんだろうな。 で、なんだ。死んですらも俺に小言を言いに来たのか。 (首輪のことです) あぁ、胸糞悪いこの首輪か。 放送じゃ辺離加(ペリカ)ってえ金に替えられるとか言ってたな。 (政宗様。この小十郎の最後の頼み、聞いてくれやしませんか) なんだ、埋葬してくれって言うのか?全くお前は足止めばかりさせるな。 そんなに光秀の野郎と戦わせたくないのかよ。 (いえ、僭越ながら、我が首級を上げていただきたいのです) ■ 「Ha!お前の首を切ろだと?!そんな小銭にたかる餓鬼みてえな真似を 後の天下人たる俺にやれって言うのか?!」 Shit!幻聴だけじゃなく、幻視まで見えてきやがった。 土下座する小十郎の姿が奴の遺体に重なって見えやがる。 やめろ、そんなことをしても、俺がお前の首を切るだなんて、出来るはずないだろうが。 (既に死んで役立たずとなったこの身に、未だ政宗様の役に立つ価値があるのならば、 喜んで差し出すのが小十郎の忠義にございます) 「馬鹿野郎!そんな事までしなくていいと、いつも言ってるだろうが! 主に向かって自分の首を切れ、だぁ?斬られたいならな、戦場で裏切り者として斬られろ!」 「バカとはなんだ、バカとは!」 背後で怒号が聞こえたんで振り向いてみたら、なんだヴァンの寝言か。 余程言われ続けてるんだろうなぁ。まぁあんな気絶の仕方してちゃ、言われても仕方ねぇが。 (では聞きますが政宗様。あんたは配下の者が首を斬られても知らん振りする、 そんな情けねぇ主なんですかい?) 小十郎のいつもの小言、そんな時に発せられるいつもの挑発。 あいつは死ぬまでこの調子で、俺に小言ばかり言って、俺を困らせていた。 「んだとテメェ!俺は奥州筆頭独眼竜伊達政宗だ! この胸くそ悪ぃ島から出たら、すぐにでも戦国の世を統一してみせる男だ! お前にゴタゴタ言われる筋合いはねぇ!斬らねぇものは斬らん!」 気宇壮大な夢を、それこそ俺の背となり脚となり支え続けた、小十郎。 そんな男の首を斬るなんざ出来るはずも無い。 (うるせぇぞ、藤次郎!あぁくだらねぇ!変なプライドばかりでかくて全体を見やしやがらねぇ! こんな情けねぇ男に一生を捧げたのかと思うと、自分の見る目のなさと不運に涙が出らぁ!) 「あぁ分かった!斬ってやる!この不忠のコンコンチキ野郎! 死んで主君から見放されるなんざ、とんだ忠臣だ、お前は!」 小十郎が言うことはいつも俺と、俺の夢のためだった。 俺のPrideを崩してまで、お前の首輪に、首を斬ることに価値があるってんなら、 「Good-Luck、小十郎。面と向かって別れを言えるとは思わなかったぜ」 六爪から一振り抜いて構える。 (おさらばでございます。政宗様) 辞めろ、そんな顔で見るな。 幼少の頃よりつるんできた、お前との思い出が蘇るじゃねぇか! 想起される思い出を振り払うかのように、俺は丹田に力を集めて愛刀を振り下ろす 「うああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 雷光が、大地を穿った。 ◇ 何分ほど気を失っていたのだろうか。 わたしは身体を起こすと辺りを見渡す。 まず最初に"左腕"を見る。 未だ異形の腕は私に生えたままだ。 その異形とわたしの上腕につながる一点に、あの人がつけた、あの人と過ごした証がある。 ちっちゃなちっちゃな、針の跡。 「存外、主張が激しいんですね、貴方」 くすりと笑って傍らを見る。 両隣で唯ちゃんとヴァンさんが寝息を立てているのを見ると、 どうやら酷い事にはならなかったのだと、胸をなでおろした。 しかし、最早わたしの存在は唯ちゃんの重石にしかならない。 唯ちゃん以外の存在を殺そうとする、あの衝動がまた何時襲ってくるか分からない。 何処か誰もいないところで、ひっそりと死のう。 唯ちゃんに気付かれないように。 「澪ちゃん」 唯ちゃんが寝言を呟く。 そうだ、どうせ死ぬなら、あの狂人から秋山澪を救い出して死のう。 それがせめてもの、唯ちゃんに出来る恩返し。 私に生きる希望と意味を一瞬でも与えてくれた、あなたに対しての。 伊達さんがわたしの方を振り向いて、あぁ起きたのかと声をかけて来る。 片手にはちょっと大きめの袋が。血が、滴っていた。 まさかと思い、飛び起きて片倉さんの遺体があった辺りを見る。 案の定、片倉さんは首を失って、指を組んで横たわっていた。 「まさか、片倉さんの首を切ったんですか?!」 分かりきったことを聞く。しかし聞かずにはいられない。 片倉さんが伊達さんを敬愛していたことを知っているからだ。 その忠誠に対して、この仕打ちはあまりではないか。 あぁ斬った、と伊達さんは応えた。 髪の毛が逆立つのを感じた。 片倉さんと過ごした六時間弱。 それは片倉さんにとっての最期の六時間でもある。 ほんの些細な時間ではあるが、それでもあの人のひととなりは十分すぎるほど伝わった。 誠実で真っ直ぐで、そして強くて。 こんなくだらないゲームで死んでいいはずの人でも、 ましてや、主君に首を斬られてぶら下げられるような人でも無い! 「なんでです?!片倉さんはあなたのことをずっと、ずっと支え続けていた人なのでしょう?!」 思わず食って掛かる。生殺与奪の権利は伊達さんが担っているというのに。 「あいつは俺の家臣だ。なら死んだあいつをどう扱おうと俺の勝手だ」 冷たく、伊達さんは言い放つ。 普段のわたしなら、その言葉の奥に潜む悲しみに気付けただろう。 いや、気づいていてもなお、言わずには居られない。 それが片倉さんに守られた、わたしの義務だ。 「だからって、そんな事して、片倉さんが喜ぶはずないです!」 「あいつが言ったんだよ、斬れってよ」 すかさず伊達さんが言う。 「Coolになれ、福路美穂子。お前は聞いてなかったかも知れないが、 首輪換金制度って奴が出た。他の誰かにこいつの首を渡すわけにもいかねぇ。 だったら俺が取っちまうのが、一番あいつのためになる。You See?」 遠藤なる男が話した瞬間、わたしの意識は混乱した。 だから遠藤の話を、私は全く耳にいれてない。 首輪換金制度。 確かにあいつらの考えそうな、ゲスな、最低なシステムだ。 片倉さんの首を他の誰にも奪われたくない、と言う気持ちも分かる。 わたしの怒りは憤りは急速にしぼんでいってしまった。 「I see」 そう呟くのが精一杯、だった 「Thank you、福路美穂子。その怒りはあいつの為だろう?主として礼を言っておくぜ」 あぁ、やはりこの人は大きい人だ。 わたしのような卑小なものの卑小な怒りすら簡単に抱き込んでしまう。 わたしは涙を流すしか無かった。 ■ 「それでどうするつもりだ、福路美穂子」 伊達さんが見た目落ち着いたわたしに聞いてきた。 わたしは先程の考えを打ち明けた。 我ながら捨鉢にも程があるとは思うが、唯ちゃんの負担になる自分を許せはしない。 だが 「そりゃ無理だろうな」 伊達さんはあっさりと言い放った。 伊達さんは整然とわたしの考えを崩していった。 ひとつ、光秀とわたしの実力差は明らかであり、 捨て身で行ったとしても秋山澪を救い出すなどと言う難事をこなせないだろうと言う事。 ひとつ、既に闘技場での凶事より二時間が経過しており、 光秀は既にその居場所を変えている可能性が高いこと。 ひとつ、一旦決めたことを勝手に変えるのは間違っていると言う事。 確かにそうだ。他人に言われると自分の浅慮が恥ずかしい。 ならばわたしはどうしたらいいのだろう。 「簡単だ。今まで通り、平沢唯を守ってギャンブル船に行けばいいだろう」 そうか。やはりそれしか無いのか。 自分の暴走が心配ではあるが、決めたことは最期まで貫き通さなければならないだろう。 「わかりました。伊達さんはどうなさるんです?」 「ちょっと待て。この島には光秀や信長、あの城をぶっ壊した奴まで居る。 その中をこのお嬢さんを守っていけるってな、本気で思ってるのかい?」 先程の提案をなにを覆そうとしているのだろう、この人は。 「さっき言っていたことと違うじゃないですか!わたしは唯ちゃんを守ります!」 なんだろう、さっきからわたしは怒りっぽくなっている。 「だから福路美穂子、お前独りじゃ無理だって言ってるだろ」 「無理でもやるんです!出来ようが出来なかろうが、守るって決めたんです!」 伊達さんは首をすくめた。 アメリカ人がよくやるポーズだが、戦国武将がやると違和感がものすごい。 「福路美穂子、Coolになれ。無理なことは無理と認めるのは恥じゃない」 「恥とか恥じゃないとか、どうでもいいんです!」 あぁ駄目だ。これって平行線だ。なんでこうなったんだろう。 わたしって、こんなに聞き分けの悪い人間だっただろうか。 「んじゃあよぉ」 不意に傍らで声がする。ヴァンさんだ。起きていたんだ。聞いていたんだ。 恥ずかしい。 「つまり旦那はこう言いたいんだろ?"俺が着いて行くから安心しろマイハニー"ってよ」 えーっと。 こういう時言う言葉って一つだと思うんです。 「「はぁ?!」」 思わずハモって言ってしまった。 ■ 結局の所、伊達さん自身は南下するらしい。 時間が経ったとはいえ、何らかの痕跡を見つけることは出来るだろうと言うことだ。 わたしは秋山澪の件を今一度頼み込み、ひとまず二手に分かれることにした。 ヴァンさんは変なことを言った責任を取る意味で、わたしたちと同行することとなった。 もしかしたらギャンブル船の景品に、ダンが居るかも知れないというと 何故かすごく怖い顔をして、同行することに同意してくれた。 さて、出発しようか、と言うところで唯ちゃんが起きてくれた。 まだ眠いのか目元をゴシゴシと擦る姿が愛らしい。 「ん~、おはようございま~す」 あくびとともに発せられた言葉は、私が忘れかけていた日常そのもので。 やはり唯ちゃんはすごいって、素直に思えた。 唯ちゃんは伊達さんの姿を見ると、急にかしこまって頭を下げた。 え?唯ちゃん、伊達さんのこと知っているの? 「筆頭さん、あずにゃんをありがとうございました」 言われた伊達さんも呆気にとられている。 どうやら面識はないみたいだ。 なら、どうしてだろう。寝ぼけているのだろうか。 「唯ちゃん、あずにゃんさんってもしかして中野梓さんのこと?」 闘技場で聞いていた唯ちゃんの後輩の名前を出す。 「うん、真面目でね。すごい練習熱心なすごい子だよ」 「その梓と言う女と俺が、どんな関係があるってんだ?」 伊達さんは怪訝と言う言葉を形にしたような顔で、唯ちゃんに聞く。 「えと、あずにゃんにそう言われたから、言っただけで。 あ、宝石と綺麗な着物をありがとうって言ってました!」 言われて伊達さんは彼にしては珍しいだろうことに、驚きを隠そうとはしなかった。 「なんでそれを知っていやがる?!」 【C-4/北西/一日目/日中】 【伊達政宗@戦国BASARA】 [状態]:健康 [服装]:眼帯、鎧 [装備]:六爪@戦国BASARA [道具]:基本支給品一式(ペットボトル飲料水1本、ガーゼ消費)不明支給品1(武器・確認済み)、田井中律のドラムスティク×2@けいおん! [思考] 基本:自らの信念の元に行動する。 1:なんでそれを知っていやがる?! 2:闘技場を目指す。 3:小十郎の仇を取る。 4:主催を潰す。邪魔する者を殺すことに抵抗はない。 5:信長、光秀の打倒。 6:ゼクス、一方通行、スザクに関しては少なくとも殺し合いに乗る人間はないと判断。 7:戦場ヶ原ひたぎ、ルルーシュ・ランペルージ、C.C.に出会ったら、12時までなら『D-6・駅』、 その後であれば三回放送の前後に『E-3・象の像』まで連れて行く。 8:馬イクを躾けなおす。 [備考] ※信長の危険性を認知し、幸村、忠勝とも面識のある時点。長篠の戦いで鉄砲で撃たれたよりは後からの参戦です。 ※長篠で撃たれた傷は跡形も無く消えています。そのことに対し疑問を抱いています。 ※神原を城下町に住む庶民の変態と考えています。 ※知り合いに関する情報をゼクス、一方通行、プリシラと交換済み。 ※三回放送の前後に『E-3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランに同意しています。 政宗自身は了承しただけで、そこまで積極的に他人を誘うつもりはありません。 ※政庁で五飛が演じるゼロの映像を見ました。映像データをスザクが消したことは知りません。 ※スザク、幸村、暦、セイバー、デュオ、式の六人がチームを組んでいることを知りました。 ※荒耶宗蓮の研究室の存在を知りました。しかしそれが何であるかは把握していません。 また、中野梓の遺体に掛かりっきりで蒼崎橙子の瓶詰め生首@空の境界には気付きませんでした。 ※小十郎の仇(ライダー)・浅上藤乃の外見情報を得ました。 ※中野梓が副葬品(金銀・宝石)と共にB-3付近に埋葬されました。 ※宝物庫にはまだ何らかの財宝(金銀・宝石以外)があります。 【福路美穂子@咲-Saki-】 [状態]:前向きな狂気、恐怖心の欠如、健康だが心音停止 [服装]:血まみれの黒の騎士団の服@コードギアス、穿いてない [装備]:レイニーデビル(左腕)、大包平@現実 [道具]:支給品一式、童子切安綱@現実、燭台切光忠@現実、中務正宗@現実、雷切@現実、和泉守兼定@現実 [思考] 基本:唯ちゃんを守る 1:唯ちゃん? 2:主催者を殺す。ゲームに乗った人間も殺す。 3:みんなで神様に祈る場所を通って、ギャンブル船に向かう 4:ひとまず魔法と主催の影を追う。この左腕についても調べたい 5:力を持たない者たちを無事に元の世界に返す方法を探す 6:対主催の同志を集める。その際、信頼できる人物に政宗から受け取った刀を渡す 7:阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら? 8:張五飛と会ったらトレーズからの挨拶を伝える 9:トレーズと再会したら、その部下となる? ?:唯ちゃんを独占したい。 [備考] 登場時期は最終回の合宿の後。 ※ライダーの名前は知りません。 ※トレーズがゼロの仮面を被っている事は知っていますが ゼロの存在とその放送については知りません ※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています ※浅上藤乃の外見情報を得ました ※自分が死亡もしくはそれに準ずる状態だと認識しました ※織田信長の外見情報を得ました ※レイニーデビルを神聖なものではなく、異常なものだと認識しました。 【黒の騎士団の服@コードギアス】 黒の騎士団発足時に井上が着ていたコスチューム 超ミニスカ 【レイニーデビル@化物語】 魂と引き替えに三つの願いを叶える低級悪魔。 自らの意志は持たないが、所有者の表の願いの裏に潜む願いすらも叶えようとする。 叶えることが不可能と判断した場合、契約を返上する。 なお、福路美穂子の肉体は既に死亡しているが契約により生かされている状態である。 また、何らかの理由でレイニーデビルが去った場合、福路美穂子は死亡確定となる。 福路美穂子の願い 表1:平沢唯を守る 裏1:主催者を殺す(主催者の一人である遠藤の声に反応する) 【ヴァン@ガン×ソード】 [状態]:健康、ダンを奪われた怒り [服装]:黒のタキシード、テンガロンハット [装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード [道具]:基本支給品一式、調味料×大量、徳用弁当×6、1L入り紙パック牛乳×5 [思考] 基本:ダンを取り戻す 0:なんで俺がついていかなきゃならねぇんだよ?! 1:また宇宙開発局を目指す 2:機械に詳しい奴を探す 3:向かってくる相手は倒す 3:上条当麻を探して殴る 4:主催とやらは気にくわない [備考] ※26話「タキシードは明日に舞う」にてカギ爪の男を殺害し、皆と別れた後より参戦。 ※ヴァンは現時点では出会った女性の名前を誰一人として覚えていません。 ※死者が蘇生している可能性があることを確認しましたが、結論は保留にしました。 ※馬イクに騙されていることに気付きました。 【伊達軍の馬@戦国BASARA】 [状態]:イノベイターの兆し [服装]:なし [装備]:傷ついたゲイボルグ(メタファー) [道具]: [思考] 基本:ヒヒーン 1:アレ?声が出ない?! [備考] ※バイクのハンドルとマフラーっぽい装飾類を失くしました。見た目では普通の馬と大差ありません。しかし、色々な意味で「馬イク」です。 ※主催の調教の効果消失。乗せる人間をある程度選ぶようになりました。 ※GN粒子の影響下において意思の交信が可能です。こちらが伝えようと思ったこと以外は相手に伝わりません。可能領域・限界時間については不明です。 ※GN粒子の影響で身体に変化が起きました。少なくとも身体能力や新陳代謝は向上しています。 ※女性によって急所に大ダメージを負った事で女性恐怖症になりました。 人の生死は、どの瞬間に決まるのであろうか。 現代医学においてすら、その境界線は定まらない。 死は誰の上にも降り注ぐものでありながら、その実態を知るものは誰ひとりとして居ないのだ。 平沢唯の身に起こった事態は、そういった神の領域での出来事。 だが、これは珍しいことでは決して無い。 臨死体験を経験した者は数知れず居るし、虫の知らせを経験したものも多いだろう。 これが平沢唯のただの夢であるか、完全なる予知夢であるか、 何らかの手段で得た魔術であるか、GN粒子なら仕方ないのか、 結界の歪みが生んだ結果なのか。 それは神のみぞ知る、もしくはのちの書き手さんのみぞ知ることなのだ。 【平沢唯@けいおん!】 [状態]:健康 [服装]:桜が丘高校女子制服(夏服) [装備]: [道具]:武田軍の馬@戦国BASARA [思考] 基本:みんなでこの殺し合いから生還! 1:あずにゃんからの伝言も伝えたし、みほみほと一緒にギャンブル船にGOGO! 2:妹を探す。でもどんな状況にあるかはあんまり考えたくない…… 3:澪ちゃんにまた会ったらどうしよう…… 4:魔法かあ……アイスとかいっぱい出せたらいいよね…… [備考] ※東横桃子には気付いていません。 ※ルルーシュとの会話の内容や思考は後の書き手さんにお任せ ※浅上藤乃と眼帯の女(ライダー)の外見情報を得ました 時系列順で読む Back 「無題」じゃあ今いち呼びにくい! このシュトロハイムが名づけ親になってやるッ! そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の「サンタナ」というのはどうかな! 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The Hollow Shrine(前編) ◆C8THitgZTg 最初から出会わなかったのなら 喪うことはない。 友人を作らなければ。 仲間にならなければ。 誰かを愛さなければ。 親しくなりさえしなかったなら 喪うことはない。 最期まで出会わずにいられなかったのなら 喪うしかない。 友人を作ったから。 仲間になったから。 誰かを愛したから。 親しくなってしまったなら 喪うしかない。 ◇ ◇ ◇ 「凄いな……」 士郎は絢爛と飾られたホールを見渡して、そう呟いた。 そこは嘆息するほどに豪華な空間であった。 呆れるほどに高い天井。 目も眩むばかりの装飾の数々。 何十人、もしくはそれ以上の人間を収容しうる広さ。 全てが浮世離れしていて、ここが船の一室であることを忘れそうになってしまう。 「……悪趣味な内装ですわ。外見ばかり取り繕って、中身は空っぽ……」 相槌を打つ黒子の声はどことなく弱々しかった。 ふらつく足取りで壁沿いに歩き、ソファーに腰を下ろす。 青ざめた顔が、黒子の不調を如実に物語っている。 乗り物の揺れと加速による平衡感覚の異常―― 医学的には動揺病、もしくは加速度病と呼称される、俗に乗り物酔いと言われる症状だ。 「それにしても、なんて無茶な運転だったんでしょう……まだ頭がクラクラしますわ」 「ああ、確かにアレは凄かったな……」 ここに来るまでの間、グラハムはひたすらにジープを『操縦』し続けた。 急加速に急減速は当たり前。 他の車両が走っていないのをいいことに、車線の違いは完全に無視。 どんな不整地でも容赦なくアクセルを踏み込んでいたほどだ。 ジープの最高速度は毎時九十キロメートルから百十キロメートルにも達する。 流石に常時限界までスピードを出していたわけではないが、常識外れの走行だったのは間違いない。 「それでもあの二人は平気だったみたいだけどさ」 「あのお二方はパイロットなんでしょう? あれくらい大丈夫に決まってますわ……」 黒子は賞賛とも皮肉ともつかないことを口にして、ペットボトルを開けて少しだけ喉を潤した。 あれだけの暴走の直後だというのに、運転していたグラハムはおろかゼクスまでもが平然としていた。 尤も、二人の経歴を考えれば当然のことだと言えるだろう。 黒子には知る由も無いが、二人はそれぞれのモビルスーツ史に名を残すエースパイロットでもある。 不可能とされていたフラッグの空中変形を成し遂げ、その機動に名を冠されたグラハム。 並みのパイロットならば殺人的な加速度で命すら危ういトールギスを乗りこなしたゼクス。 どちらも常人離れした対G能力を持っている。 その点で黒子はただの人間だ。 学園都市では大能力者(レベル4)に分類されているが、耐久力は少女の域を超えはしない。 「それに比べて、わたくしときたら……」 ペットボトルを握る手に力が込められる。 肉体の丈夫さで劣っているのは深く気に病むことではない。 だが……いや、だからこそ、それ以外のところで足を引っ張ることだけは避けなければならなかった。 これは、ギャンブル船に到着してすぐのことだ。 グラハムは乗り捨て同然にジープを飛び降り、船内へと駆け込んでしまった。 利根川と真宵を手にかけた犯人が潜んでいるかもしれないのに、単独行動は危険極まりない。 ゆえに黒子は己の不調を隠して彼を追いかけようとした。 それを咎めたのは、他でもない衛宮士郎であった。 「…………」 黒子はそこから先の口論を思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をした。 体調が悪いなら残るべきだと言い張る士郎。 単独行動をさせるわけにはいかないと反論する黒子。 自分のことながら、振り返るだけで頭が痛くなるほど低レベルな応酬であった。 冷静になって考えれば、どっちもどっちだと評するより他にない。 独断専行を許すのは確かに危険だ。 しかし空間転移すらできないコンディションで追いかけても、足手纏いになるのが関の山だろう。 そもそも下らない口論で時間を潰すこと自体が愚の骨頂だったのだ。 ゼクスが仲裁に入り、グラハムへの追従を申し出てくれなければ、タイムロスは更に拡大していたに違いない。 「気にするなよ。白井は女の子なんだから、無理はしちゃ駄目だ」 結局、グラハムとゼクスが衣達を捜索し、黒子と士郎はこの大ホールで待機しておくことになった。 待機といえば聞こえはいいが、現実は捜索からのリタイア。 自分が具合を悪くしなければ―― せめて平静さを失くしていなければ―― そんな思いが黒子の肩に圧し掛かっていた。 「あまり慰めないでくださいませ。余計と惨めになりますわ」 黒子は囁くような声で答えた。 先ほどからの会話は全て小声で交わされている。 利根川と真宵を殺した何者かがいるかもしれない以上、このホールも安全地帯ではないのだ。 少なくとも黒子が回復するまでは、静かに身を潜めておく必要がある。 「だからそんなこと言うなよ。……はい、薬」 「……ありがとうございます……ところで、これはどこから?」 士郎が手渡したのは、どこにでも売っていそうな錠剤の酔い止めだった。 都合のいいことに酔ってから服用しても効果があるタイプである。 「ゼクスがくれたんだ。俺達と会う前に調達した道具の中にあったんだってさ」 「そうだったんですの……。何から何まで、迷惑かけっ放しですわね」 ペットボトルの水で錠剤を二つ嚥下する。 実際に酔ってから飲んでも効果は控えめだろうが、飲まないよりはいくらかマシだろう。 一息つき、蓋が開いたままのペットボトルを傍らに置く。 しかしそれがまずかった。 大ホールのソファーは、一面を飾る装飾品と同様の高級品だ。 座り心地がいい分、重みが掛かった分だけ沈んで変形してしまう。 歪んだ面に置かれたペットボトルは、当然のように安定を崩し、床に中身をぶちまけた。 「あっ……」 咄嗟に容器を押さえるも、半分以上が零れてしまった。 黒子は再度溜息をつき、スカートのポケットからハンカチを取り出した。 たかが水とはいえ痕跡を残すのは望ましくない。 第三者からすれば、ここに誰かがいた証拠となってしまうのだから。 足元の水溜りをハンカチで拭うと、あっという間に水が浸み込んで使い物にならなくなった。 布が薄すぎて零れた水を吸いきれないのだ。 「これじゃ駄目ですわね。何か別のものは……」 黒子の呟きには微かな苛立ちが込められていた。 他に使えそうなものはなかったかと考えるより先に、聞き覚えのある言葉が耳に入った。 「投影、開始――(トレース・オン)」 「え――?」 それはどこで聞いた言葉だったか。 黒子が思い出すより早く、士郎は床に膝を突いて水を拭き取りはじめていた。 その手には一枚のハンドタオル。 どこから調達したのか分からないが、汚れひとつない新品だ。 「あの、衛宮さん? 似たような質問で恐縮なのですが……それはどこから?」 「えっと……これもゼクスから貰ったんだ」 説明としては筋道が通っている。 しかし士郎が僅かに言いよどんだのを、黒子は聞き逃さなかった。 「そうですか」 大して気にしていないように振舞いながらも、隠し事の理由を考える。 動機は単なる好奇心だ。 隠し事そのものを責めるつもりは一切ない。 黒子も能力のことを殆どの相手に隠している以上、士郎に文句を言える立場ではないのだから。 「……もしかして」 そこでようやく思い至る。 先ほど士郎が呟いた言葉―― アレは首輪を解析したときに聞こえた単語ではなかったか。 ――トレース・オン。 その一言が魔術を発動するキーワードになっているのだとしたら。 「衛宮さん、もしかしたらわたくしの勘違いかもしれませんけど……」 まさにその瞬間であった。 廊下へ繋がる扉の向こうから、微かな銃声が鳴り響いたのは。 「――な」 「え――」 黒子と士郎の視線が一瞬だけ交差する。 うっかりすれば聞き逃したかもしれないほど小さな音だった。 士郎は壁に立てかけてあったカリバーンを掴むと、銃声のしたほうへ駆け出していた。 「白井はそこにいてくれ!」 走り去っていく士郎の背中を、黒子はただ見送ってしまった。 あまりに急な展開に思考が追いつかない。 銃声? どこから? そこにいて? 貴方はどこへ? 縺れた思考が一本に繋がり、ようやく成すべきことを理解する。 「ちょっと! 衛宮さん!」 士郎を追って扉を押し開ける。 しかし時既に遅く、がらんとした廊下に人影はない。 どこかの岐路で曲がったのだろうか。 黒子は悔しげに、色の薄い唇を引き結んだ。 身勝手な行動を取った士郎を責めるのは容易い。 容易いが、正しいとは限らない。 あんな強行軍でギャンブル船に戻ったのは、衣とカイジの元へ迅速に駆けつけるためだ。 更に言えば、利根川と真宵の死を伝えられたからでもある。 それらは『衣とカイジが殺されてしまう前に二人と合流する』という目的に収束する。 ならば銃声を聞いて駆けつけることに何の問題があるというのか。 勿論、単独行動を取ったのは責められるべき点だが―― 「なんて――無様なんでしょう」 置き去りにしてしまうことと、置き去りにされてしまうこと。 一分一秒の違いで生死が変わりうる状況なら、悪いのはきっと後者だ。 自分が体調を崩していなければ。 あるいは、銃声が聞こえたときにすぐ動けていれば。 きっとこんなことにはならなかったに違いない。 黒子はがらんどうの廊下の向こうを見やり、静かに扉を閉めた。 どこかの誰かが言っていた。 加速度病を起こしやすい要因は、空腹、満腹、睡眠不足に物理的な圧迫感。 そして――精神的なストレス。 いつからだろうか。 こんなにも心が治まらなくなったのは。 「そんなの、分かりきってますわ……」 黒子は扉に体重を預け、ずるずると膝を曲げた。 静か過ぎる空間が固体じみた密度で圧し掛かって、黒子の胸の奥を軋ませる。 広大なホールにいるのは自分一人。 そう、どうしようもないほどに独りだから。 『あの人はもういない』という現実を、否応なしに突きつけられてしまうのだ。 「…………っ」 名前を叫ぶことすらできない。 もしもここで口にしてしまったら、抑えてきた感情を全て吐き出すまで止まらなくなる。 絶望。恐怖。孤独。喪失。不安。恐怖。後悔。慙愧。無念。 憂鬱。憎悪。空虚。諦念。憤怒。悲嘆。苦痛。怨恨。愛憎。 一度でも致命的な決壊を許してしまった堤防は、もう二度と使い物にならない。 そうなる前に穴を埋めないと、壊れた箇所から破損が広がり、溢れ尽くすまで崩れ続ける。 後に残るのは堤防を失った裸の自分だけ。 心の強い人なら、そこから新しい堤防を組み上げて立ち直ることができるだろう。 むしろ造り直すことで良い方向に転がることがあるかもしれない。 けれど黒子は、自分がそこまで強い人間だと信じることができなかった。 「…………」 ふと、思う。 これまでの自分は、この苦しみをどう耐えてきたのだろうかと。 ◇ ◇ ◇ ――彼女はゆったりとした手付きで、自動拳銃のグリップからマガジンを抜き取った。 焦るでもなく、焦らすでもなく、無難にマガジンの交換を終わらせる。 この程度は手順さえ分かれば誰でも出来ることだ。 撃ち尽くしたばかりの空弾装をデイパックへ放り込む。 赤みを帯びた瞳に正気の色は見られない。 衝動とは、感情ではない。 自身の外部から襲い掛かる暴力的認識――それを衝動と呼ぶ。 ならば彼女を突き動かすのは正しく衝動だ。 『日本人を殺せ』と強制する魔性の暴力。 彼女の内から湧き上がったのではない目的意識。 しかし、その凶行を実現するのは、他でもない彼女自身。 故に人々は彼女をこう呼ぶ。 虐殺皇女と―― ◇ ◇ ◇ 「……遅かったか」 見つけてしまったソレを前に、ゼクスは苦々しく呟いた。 二人をホールに残してグラハムを追いかけたのが五、六分前。 先行するグラハムとの時間差は一分前後といったところだった。 走れば埋まると思われた距離だったが、ゼクスは未だにグラハムとの合流を果たせていない。 この船を一時拠点にしていたグラハムと、初めてここを訪れたゼクスとでは情報量が違いすぎたのだ。 予備知識を元に動き回る相手を、土地勘のない者が捕まえるのは難しい。 いっそ自分が少女と残り、少年に捜索を任せたほうがよかったのではないか。 ゼクスは思考の片隅でそう考えながら、道なりに船内を駆け回った。 その結果、辿り着いたのがこの場所である。 「そこまで時間は経っていないようだが……」 必要最低限の情報はジープでの移動中にグラハムから聞かされている。 船に残っていたという人々については特に念入りに確かめた。 利根川幸雄。放送で名前を呼ばれた一人で、元帝愛幹部だったという中年の男。 八九寺真宵。同じく放送で名を呼ばれた、十代前半の少女。 伊藤開司。丸みのない顔付きで、頭髪を無造作に伸ばした青年。 天江衣。金色の長髪に大きな髪飾り。外見的には八九寺真宵と同年代か幼い程度。 いずれの人物とも直接出会ったことはないが、与えられた情報から、人となりの大枠は掴めたつもりだ。 それ故に確信できる。 この亡骸は伊藤開司の成れの果てであると。 無人の甲板。 船内へ通じる出入り口の傍。 陽光と船体の影との間に伊藤開司の亡骸はあった。 血だまりにうつ伏せで倒れ伏し、背中に開いた孔を晒している。 ゼクスは甲板に膝を突き、背中の銃創を検めた。 流血の様子からして、前のめりに倒れたまま動かされていないようだ。 伊藤開司に対してゼクスは特別な感情を持っていない。 だからこそ、こうして冷静に状況を検分できるのだろう。 一通り背中の創傷を観察し終えると、次は遺体を裏返して胸の傷を調べる。 銃創は様々な情報をもたらしてくれる。 ただ銃創を見るだけでも、撃たれた方向や銃の種類の見当がつく。 火薬の付着などを調べれば発砲した距離まで判別できるほどだ。 そして、伊藤開司の銃創からは以下のようなことが分かった。 胸の傷は小さく背中の傷が大きい。 これは彼が正面から胸を撃たれ、弾が背中へ貫通していったことを示している。 周囲の状況からして、犯人は船内と甲板の境界付近で発砲したようだ。 また胸の傷のサイズから、使用されたのが拳銃であると推定できる。 「やはり第三者の介入……まずいな、これは」 ゼクスの言葉には焦りと確信が込められていた。 伊藤開司の命を奪った弾丸は、心臓を水平に撃ち抜いている。 背丈の低い天江衣が発砲したにしては角度が不自然だ。 他の人物――利根川幸雄と殺しあった結果というのもありえまい。 心臓が何らかの理由で停止した場合、数秒から十数秒で脳が酸欠に陥り、死亡する。 つまり、伊藤開司が撃たれたのは早くとも放送の十数秒前。 利根川幸雄と相打ちになったと考えるには無理がある。 そして八九寺真宵に至っては両方の理由が当てはまってしまう。 この状況を説明する最適解、それが、第三者による殺害。 ゼクスはやおら立ち上がり踵を返した。 グラハムの追跡を続けるべきか、一旦ホールへ戻って、このことを二人に伝えるべきか―― 「待て、これは……」 ゼクスは踏み出しかけた足を止め、足元のそれを一瞥した。 そして再び、伊藤開司の亡骸に手をかける。 「まさかとは思うが……」 偶然の出来事という可能性は充分に考えられる。 しかし、もしこれが『明確な意図の下に成された』のなら、断じて無視するわけにはいかない。 ゼクスは発見したそれを記憶に刻み、船内へ駆け戻った。 無論、伊藤開司を殺した者もそれに気付いているかもしれない。 ゼクスは脇目もふらず、甲板へ向かう際に通った道を逆走していく。 階段へ続く角を曲がろうとしたときだった。 聞き覚えのない女の声が、ゼクスを呼び止めた。 「あの! すみません」 「……っ!」 咄嗟に振り返ると、そこにはスーツ姿の女がひとり、廊下の奥で佇んでいた。 距離は十メートル程度、或いはもう少しあるだろうか。 ゼクスは己の迂闊さに表情を険しくした。 見通しが悪い場所だったとはいえ、声をかけられるまで、女の存在を悟れなかったのだ。 第三者の殺戮を想定したばかりだというのに、有り得ざる油断である。 むしろ背後から銃殺されていないのが幸運といえるだろう。 ゼクスは周囲に意識を巡らせながら、女と対峙するように向きを変えた。 「――ああ、よかった。無視されてしまったらどうしようかと思っていました」 女はほっと胸を撫で下ろしたらしかった。 あまりに気の抜けた仕種に拍子抜けを禁じえない。 高度な教養を身につけてきたのか、行動や言葉の端々に気品が見え隠れしている。 例えるなら、雰囲気は王侯貴族のそれに近い。 少なくとも戦場慣れをしているようには感じなかった。 女は観察されていることに気付いていないのか、ゆったりとした足取りでゼクスに歩み寄ってきた。 「私はユーフェミア・リ・ブリタニアと申します。 少しお話をしたいのですが、お時間をいただけないでしょうか」 ◇ ◇ ◇ ――そして少女は涙を流す。 ああすればよかった。 こうすればよかった。 ああしなければよかった。 こうしなければよかった。 後悔が幾ら積もろうと、割れた鏡は戻らない。 時計の針は戻らない。 ◇ ◇ ◇ グラハムは独り無人の廊下を走り続けた。 船内通路に窓はなく、白色の間接照明だけが狭い路を照らしている。 しかし不気味さすら感じる静寂も、グラハムの足を鈍らせるものではない。 船室という船室を開け、物陰という物陰を覗き、ひたすらに船内を駆け回る。 「天江衣! 私だ、グラハム・エーカーだ!」 洞穴じみた薄暗さと静けさの中で、グラハムの声だけが反響する。 ギャンブル船に帰還した直後、彼は一も二もなく船内へ駆け込んだ。 その行為がどれほど危険かは自覚している。 しかし時には、無理を貫き道理をこじ開けなければならない場合もあるのだ。 かつて、民間人が勤務する軍需工場を襲った新型ガンダムを、単機で迎撃したときのように。 「聞こえたなら返事を頼む! 天江衣!」 グラハムをこうまで突き動かす動機。 それは只ならぬ焦りであった。 別行動の開始から放送までの短い間に、二人が命を落とした。 ギャンブル船で恐るべき出来事が起こったのは想像に難くない。 しかも、地獄は今も続いているのかもしれないのだ。 「……ここにもいないか」 グラハムは苦々しく言い捨て、空っぽの客室の扉を閉めた。 いくつ扉を開いても、目に映る風景はどれも同じ。 豪勢な室内灯。上等な絨毯。真新しいシーツのベッド。 代わり映えのなさに眩暈すら感じそうになる。 だが、諦めるわけにはいかない。 友達を作ることができると請け負った―― 彼女の安全を保障すると約束した―― その言葉を嘘にしてたまるものか。 「更に上階、いや――」 この一区画だけとっても数十もの客室が並んでいた。 船全体の部屋の総数に至っては、幾つになるのか見当もつかない。 それらを虱潰しに探すのはあまりにも効率が悪すぎる。 想像するのだ。 衣がどのような状況に置かれているのかを。 まず、船内の異変に気付いてすらいない場合。 これはまずありえないだろう。 利根川と真宵は衣と行動を共にしていたはずであり、放送も流れた後なのだから。 次に、異変には気付いているものの、活動が制限されている場合。 殺人者に捕らわれているか、逃げ場所が限られてしまった状況。 或いは何らかのトラブルで負傷し、身動きできない状況。 いずれにせよ最悪のケースだ。 衣の居場所を予測することなどできない。 そして、異変を察知していて尚且つ自由に活動できる場合。 これは最大の希望的観測だ。 肉体が健康で、かつ行動範囲が限定されていない状態の人間は、どこへ逃げ場を求めるのか。 例えば、確実に身を隠せる空間。 例えば、破壊されにくい頑健な守りの中。 「あるいは、一度訪れて見慣れている場所……まずはあそこだ!」 グラハムは踵を返し、脳裏に浮かんだ場所を目指して駆け出した。 天江衣が無事で、なおかつ逃走先を選べるなら、訪れたことのある場所に身を寄せるはずだ。 確率は五分か六分と踏んでいたが、闇雲に探し回るよりずっといい。 昼なお暗い廊下を走り抜け、グラハムは目的の扉を勢いよく押し開けた。 「天江ころ――――!」 その瞬間、グラハムの身体を鈍い衝撃が襲った。 一歩、二歩とたたらを踏み、廊下の壁際で踏み止まる。 驚きに目を見開き、衝突してきたそれを見下ろす。 小刻みに震える、耳のような飾り。 腰に届かんばかりの金糸の頭髪。 捜し求めていた少女が、そこにいた。 「グラハム……、えぐっ、利根川が……ひぐっ……カイジが……。 麻雀をしたのに……衣が白河夜船であったばかりに……ぐすっ……とーかぁ……」 衣はグラハムにしがみ付いたまま、混乱した思考をそのまま口に出している。 言葉に脈絡がない上に、涙声でひどく聞き取りづらい。 グラハムは軍服が濡れるのも構わず、衣の身体を抱き寄せた。 何があったのかは問い詰めない。 今はただ、衣が落ち着きを取り戻すまで待っている。 一分。 五分。 十分。 「やはり衣には……ひっく……知音を得ることなど……」 「…………」 時間が経つにつれて、嗚咽が小さくなっていく。 グラハムは噛み締めた歯が軋む音を聞いた。 この少女にどんな咎があったというのか。 苦しみもがき、悲しみに暮れなければならない理由がどこにある。 自分のように修羅として生きた者が地獄に堕ちるなら、それも宿命と受け入れられよう。 ならば、天江衣がこの生き地獄に堕ちる道理とは何なのか。 「赦せんな……」 怒りの矛先は幾らでもある。 衣を殺し合いに放り込んだ帝愛。 魔法とやらを売りつけた共謀者。 目的は見当もつかないが、私利私欲が根底にあるのは間違いあるまい。 だが、最も赦しがたいのは―― 「……何より、私自身を赦せそうにない」 「それは違うぞ、グラハム!」 衣がグラハムを見上げた。 涙やら他の液体やらで、顔中がひどいことになっている。 しかし眼差しはまっすぐにグラハムを捉えていた。 「グラハムは戻ってきてくれた……! 黯然銷魂としていた衣を……助けに来てくれた! だから……」 髪を振り乱し、グラハムの自責を否定する。 約束を蔑ろにした彼を怨思するどころか、肯定すらしているのだ。 「……その言葉、ありがたく受け取らせて頂こう」 グラハムはまるでガラス細工を扱うような慎重さで、衣の髪を撫でた。 ギャンブル船三階、会議室前。 かつて仲間達と集い、今生の別れとなったその場所で。 ◇ ◇ ◇ ――彼は死んだ。 どうしようもないほどの致命傷だ。 心臓に撃ち込まれた銃弾は、心筋に孔を穿ち、血流の中枢を潰してしまった。 胸の痛みが強過ぎて、背中が床にぶつかった衝撃すら感じない。 肉体を巡った静脈血を受け入れる右心房。 動脈血を肺から受け取って左心室へ送る左心房。 肺へ流れる静脈血が通る肺静脈。 酸素が満ちた血液を全身に届ける大動脈。 それら全てに孔が開いた。 心臓がどれだけ拍動しても、肝心の血液は溢れてしまう一方だ。 これでは絶命するより他にない。 それでも今はまだ血管を流れている血液がある。 見方を変えれば、その酸素が尽きるまでは生きていると言えるかもしれない。 しかしそれもごく僅か。 不可避の結末へ転げ落ちるこの瞬間を、死と呼ばずして何と言うのか。 最後の鼓動が動脈を駆けのぼる。 これが脳髄を通り過ぎれば、彼は終わる。 意識が消える。 記憶が消える。 肉体が潰えれば、魂までもが霧散する。 彼という人格が消えてしまう。 望みも決意も何一つ達することなく消えてしまう。 光などなく、闇さえもない、無の中へと墜ちていく。 そこではきっと、無という言葉も、墜ちていくという意味さえもないのだろう。 それでも―― ほんの数秒で終わってしまう命でも、何かできるはずだ。 小さな肩で震えていた、あの儚い少女のために。 時系列順で読む Back ぽかぽか時間 Next The Hollow Shrine(後編) 投下順で読む Back ぽかぽか時間 Next The Hollow Shrine(後編) 179 その日本人をぶち殺す 天江衣 188 The Hollow Shrine(後編) 179 その日本人をぶち殺す ユーフェミア・リ・ブリタニア 188 The Hollow Shrine(後編) 174 解明への灯 ゼクス・マーキス 188 The Hollow Shrine(後編) 174 解明への灯 グラハム・エーカー 188 The Hollow Shrine(後編) 174 解明への灯 衛宮士郎 188 The Hollow Shrine(後編) 174 解明への灯 白井黒子 188 The Hollow Shrine(後編)
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47 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 20 47 31 ID YbiTrU5Q 海原「あ、あの、妹Fさん?」 妹F「はい、なんでしょうか?とミサカは返事します」 海原「あっ、あ、あの時、あの別れ際の…ア、アレって…////」 妹F「あの時?別れ際?アレ?…一体何のことでしょうか?とミサカは疑問符を並べます」 海原「…えっ。あの時、ってつい最近のことですよ。ほら、カイジさんを誘拐した後から主催関係者の立ち入り規制が入るまでの間の」 妹F「?そんなことありましたっけ?とミサカ何も思い出せずにいます」 海原「えええっ!ど、どうしたんですか!?あ、あんなことしてきたのに忘れたんですか!?」 妹F「???」 R妹「それはですね、とミサカは説明好きのお姉さん役を買って出ます」 海原「な、なにかあったんですか!?」 R妹「私の記憶(記録?)のによりますと、妹達が死者スレから撤収した後リボンズ様が一部調整を行って感情の規制および記憶の改竄を行いました、とミサカは知られざる真実を語ります」 海原「え、えええええっ!!!」 【海原君を弄るのが大好き♪】 48 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 22 24 42 ID lHFwsBhE C.C.「やれやれ、あのボーヤは相変わらず女運が無いようだな」 部長「海原君だもの、仕方ないわよ。 さて、上条君には何かご褒美をあげないとね」 上条「ご褒美?」 マリアンヌ「ほら、一発で本物の美琴ちゃんを当てたじゃない。 その賞品みたいなものよ」 上条「いや、今のは御坂から教えてくれたようなもんでしょ」 C.C.「(聞いてない)そうだな……美琴、お前がボーヤの彼女になるというのはどうだ?」 美琴「へ? ちょ、ちょっ、何でそんな話になるのよ!!?///」 マリアンヌ「あら、案外お似合いじゃないかしら?」 美穂子「いい考えだと思います。 ねえ、上埜さん」ニコニコ 部長「そうよねえ、美穂子」ニヤニヤ 上条「ちょっと待ったぁ!! お互いの気持ちも考えずにその場のノリで付き合うっておかしくないか!? 少しは御坂の気持ちも考えてやれよ!!」 C.C.「じゃあボーヤの方は満更でも無いと?」 上条「そりゃあまあ御坂は可愛いし、案外気が付くし、結構いいかも……って何言わせてんだ!!」 美琴「え……あ、えーっと……///」 妹E「まったくしょうがないわね。 お姉様が踏ん切り付かないんだったら、代わりにこのミサカEが付き合ってあげるわよ」 美琴「って、それあんたが当麻と付き合いたいだけでしょ!! そんな事される位だったら私が当麻と付き合うわよ!!」 部長「はい決まりー♪」 美穂子「お二人共、おめでとうございます」 マリアンヌ「お幸せにね、お二人さん」 美琴「え゙!!? あ、いや、その~~……」 上条「えーと……上条さん、状況が良く掴めないんですが……」 美琴「な、何よ!! 私が彼女じゃ不服だっての!? 何か文句があるなら言ってみなさいよゴルァ!!!」 上条「いえ滅相も御座いませんワタクシ非常に光栄に存じておりますですハイ!!」 美琴「よし! じゃあ、今からあんたは私のか……か、彼氏なんだからね!/// 分かった!?」 上条「は、ハイ!!」 妹E「まったく、世話の焼ける二人よね。 ……あーあ、せっかくお姉様の口調を完璧にマスターしたのになあ。 ……けどまあ、あの調子なら進展も遅いだろうし、ミサカにもまだチャンスはあるわよね、うん」 49 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 22 42 46 ID lOSflf1I インデックス「………………………………………」 ヴァン「チェストォォォォォォォォ!」 幸村「お…お…御館様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 ヴァン「よーし俺の勝ちだな。おら、出すもん出せ」 幸村「御館様……不甲斐ない幸村を許してくだされ……」ジャラジャラ インデックス「…………………とうまのバカーーーーー!!!」 二人「ぶべら!?」 50 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 22 42 51 ID hoqPl8SE インデックス「うう~」 リボンズ「どうしたんだい、彼を盗られて悔しいのかい。イカ娘」 インデックス「誰がイカでゲソか!」 イリヤ「口調変わってるわよ」
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夢幻の如くなり(後編) ◆mist32RAEs ◇ ◇ ◇ ゼクスらを見つけたのは偶然だった。 というより、こちらも信長から離れるために移動していた最中、バッタリ遭遇してしまったに過ぎない。 まだ制限は解除されておらず、今の自分は無力な素人だ。 だがあの女が引いたということは、それを知らなかったのか。 「誰かと思えばホントにゼクスかよ。で、テメーあの女に俺の制限のこと喋ったのか?」 「あいにくそんな暇も余裕もなかったがな……見ての通りのくたばり損ない、さ……」 やはり。 一方通行はそんなゼクスに対し、ハッと皮肉げに笑った。 確かに怪我の具合を見れば、長くはもたないだろうということは明らかだった。 念のために構えた支給品の二二口径をだらりと下ろして、ゆっくりとゼクスの表情を覗き込む。顔色は極めて悪い。 「ま、最初に言っとくけど助ける気ィねーから俺。ちょいと死ぬ前に知ってること色々喋ってくれや。断ったら少し寿命が縮むだけだがよォ? そのまま死ぬよかだいぶ痛ェ目に合うんじゃねーかなァ、ギャッハッハッハッハ!」 それは本心だった。 できれば今すぐ衝動に任せて血の華をぶちまけてやりたいが、今は能力が封じられており武器はゴム弾の拳銃ひとつ。 しかも相手は放っておけば、じきにくたばる身だ。すでに満身創痍でろくに抵抗すらできないだろう。 そんなヤツをわざわざ殺してもイマイチ楽しくなるとは思えなかった。 それより、この制限下でも制圧出来る相手に出会ったチャンスを利用し、情報を手にいれるべきだ。 正直にいって今後の戦いで相手を殺さぬように手加減できるとは自分で思えなかったし、する気にならなかった。 頭の中で声が聞こえ始めた。内なる衝動が殺せ、殺せと叫んでいる。 ぎしりと歯を食いしばり、この場はどうにかそれを押さえ込んだ。 「殺し合いに乗った……んだな」 「……べェつにィ? やるこた変わっちゃいねェよ。邪魔な奴はブッ殺して、ゲームの主催もブッ潰してやるだけだ。 俺の都合のために虫ケラがいくらか死んでも知ったこっちゃねェ。踏みつぶして進むって、ただそれだけのこった」 今の一方通行は狂っているが最優先事項を忘れたわけではない。 殺人衝動にさえとらわれなければ、何をすべきか、そのためには何が必要かという思考を推し進めることは可能なのだ。 先程の戦闘で頭に血が上っていたのは確かだが、制限による無力化で冷静な判断力をどうにか取り戻した。 とりあえずゼクスから情報を手に入れること。そしてその荷物を奪い取ることが目的だ。 情報はいわずもがな、荷物の中に使える支給品があれば、無力化されている間はそれが頼りになる。 手に入れておくに越したことはないだろう。 「とりあえずもうすぐくたばるんだから、その荷物はいらねーよな? 俺が貰ってやるから寄越せオラ。ホレ、手に持ってるその拳銃もだよ」 はじめに支給されていた品の最後の一つ――アンチスキルのニニ口径ゴム弾拳銃を突きつけながら、ゼクスのデイパックを奪う。 まともに人を殺すことすらできない銃モドキに頼ることになるとは思わなかった。 あちらはこの銃がゴム弾であることなど知らないせいか、抵抗はない。またはすでにその力も尽きたか。 とにかく次だ。まだ用件は済んではいない。 「で、だ。こっちが本題なんだが、あと何分かで俺の制限が解ける。つまり能力をまた15分だけ使えるようになるわけだ。 そん時にテメーに手伝ってもらいたいことがある。それまで死ぬんじゃねェぞォ? 終わったらサックリ楽に殺してやっからよォ」 「……」 すっかり忘れていたが、先刻手に入れたアーチャーの首輪を解析しなければならない。 しかも都合のいいことに他にもう一つサンプルがみつかったので失敗しても代わりがきく。 そのもう一つとは言わずもがな、眼前のゼクス・マーキスのことである。 「目的のために手段は選ばないということか……」 「ハッ、よく言われるけど違うんじゃねェのかァ? 目的のためならとっちゃいけない手段ってのが最初からあんだろうがよ。 目的を定めた時点で手段ってのは限られてんだよ。そいつを見失った奴が選ばねェとか抜かすわけだ」 「お前は……違うと?」 「最初からなァ、元から俺が欲しいものは変わってねェよ。ちょいと事情が変わって、ちょいとやり方を変えたってだけだ」 そろそろ時間だ。時間を確認する。 路地の薄闇をぼんやりと照らす首輪のランプが赤から緑へ変わった。 「さて、時間だ」 「なにを……する気だ」 「まあ見てのお楽しみだ……っと」 ゼクスの顔をのぞき込むような動作で正面に腰を下ろし、無造作に片手で顔面を掴んだ。 驚いたように目を見開いてこちらを見ているが、能力が使えるようになった時点で向こうにはどうすることもできない。 (おとなしくしなァ、俺の声が聞こえるなら黙って頷け) (な……ぐっ!?) (俺とテメェの声をベクトル操作して直接お互いの頭蓋骨に響くように調整した。口ン中でモゴモゴやれば聞こえるはずだ。やってみろ) (いわゆる……骨伝導という奴か。お前は盗聴機を想定して……?) ゼクスもすでに気付いていたか。主催への反抗をブチあげただけはある。 この調子なら他にも何かすでに情報を得ているかもしれない。 (他にもこの首輪について何か知ってやがるな……どーせ直にくたばるんなら素直に全部ブチまけていけよ。 テメェの大事なリリーナちゃんの敵討ちくらいやってやるからよォ) (……私が接触した参加者――二十世紀末の日本からやってきた魔術師の解析結果だ……。 これから話す内容は、基本的に彼の時代における技術を基準にしたものになる……。 外面には視覚による情報の偽装・抑制を行うことに特化した概念物・礼装が埋め込まれ、現在も機能している。 視覚妨害以外にも礼装が存在……恐らく魔術行使に対する防御、ただし魔力供給がされていないため、死体から外された状態では機能していない。 中心部には金属……知る限りの材質において該当するものなし。トランシーバーに似た構造の装置が存在……機能の断定は不可能。 ICチップらしきものが存在……機能の断定は不可能。電磁石と共に液体が存在……知る限りの液体に該当するものがない。 製作技術――技術と工程。車、電化製品といった二十世紀の技術の範囲外で作られている。 その技術品に対し、視覚妨害・魔術妨害の機能を持つ限定礼装によって保護を行っている。 以上だ……私の荷物に情報をまとめたメモがあるから後で確認するがいい) (ヘェ……いいぜ、今ので全部覚えた。おかげでだいぶ仕事がはかどりそォだ) 一方通行が暮らす学園都市の技術レベルは、おそらくその魔術師とやらの時代よりも実質数十年は進んでいる。 実際に調べてみれば新たにわかる事もあるだろう。制限もあることだし余計な手間を食っている暇はない。 再び能力を封じられる時間までに、やれる限りのことをしておかなくてはならないからだ。 (……こいつは) 早速、ゼクスを掴んだほうとは逆の手でアーチャーの首輪を取り出し、解析を開始する。 一見でその断片すら解析できない要素が複数存在。これが魔術の礼装というやつか。 液体……おそらく液体爆薬、そしてトランシーバーについては多少未知の要素があるものの想定の範囲内だ。 バイタルサインをチェックする機能と見られる回路あり……しかし現在は機能していない。 爆薬、そしてそれに付属する回路と繋がっているが……止まっている。 ということは、おそらくこれを禁止エリアに放り込んでも爆発はしないだろう。 問題は魔術礼装……一方通行にとって未知の領域だ。 ここに来てから未知の力に触れたのは二回。一度目は織田信長の黒い影――侵食する瘴気。 そしてもうひとつ……一方通行の操作したベクトルすら乱す、あの女の能力――停止の結界。 どちらかといえば後者のものに性質が近い。 首輪をしていなかったあの女は主催側の人間である可能性が高い――つまりこの首輪ギミックの作者である確率は高い。 信長の能力であれば、すでにあっさり反射できるほど解析は済んでいるのだが、そううまくは行かないようだ。 (こっちは解析終了だ……次は生きているテメェの首輪を調べる。残り……9分と28秒。こりゃ楽勝だなァ。 しかしこっちのヤツと違って、そいつは今もバイタルサインのチェックが生きてるだろうぜ。ま、俺自身は反射で済むワケだがよ。 テメェは俺がしくじれば爆発してオシマイなんだが、今更恨む筋合いでもねェだろう? そんときゃ大人しく諦めなゼクス) (いいさ……今更こんな生命など惜しくはない……帝愛打倒に辿り着くための捨て石になれというなら、なってみせよう……!) (ヒャッハッハ……いい心がけだ。んじゃまァ――) (……だが!) 手首を強い力で握り締められた感触があった。 隻腕も同然のゼクスによって、一方通行の手が掴まれている。 反射的に、殺すか――と思い立った瞬間、ベクトル操作によるものではない、はっきりとした肉声が耳に響いた。 「これだけは……聞いておけ……一方通行……!」 「てめ……」 「いいか……勝利とは……水に落ちた犬を棒で叩くことだ……っ!」 「……はァ?」 少なくとも殺意はない。 何かを伝えようとしていることは分かる。 しかし、この死にかけの男は果たしてまともな思考で喋っているのだろうか。 思わずその顔をのぞきこんでしまう。 ゼクスの眼には確固たる意志の光があった。 思い出す――最強のレベル5たる自分の前に立ちはだかった、ボロボロになりながらも一歩も引かなかった男がいた。 そして、それを守るように立ちはだかった女がいた。あいつらも――確かこんな眼をしてはいなかったか。 一瞬、我を忘れる。 「……オマエ」 「勝つ事とは……負かすこと、蹴落とすこと、躓いた者を踏みつぶすこと、相手の傷口を広げて塩を塗りこむことだ……! 勝ち残るとは……屍の山を超えていくことだ……! 決して美しいことではない……残酷でさえある……っ!」 そしてその事実に気づいたとき、自分が憧れた/殺したくてたまらない存在が、内なる思考の中で歪んでいく。 まるで鼓動のように、どくんと自身の体が震えたように感じた。 「私は甘すぎた……ヒイロ・ユイのようには、それが、できなかった……ゆえに此処で無為の内に死ぬのは当然の事なのだろう……! 一方通行……貴様がそれでも勝ちたいと望むなら、鬼になれ……ッ!!」 一方通行の中で突如、爆発するように殺意が芽生えた。 黒い感情に満ちた、熱に浮かされたような狂喜が尋常とは思えぬ高ぶりをもたらす。 鬼気迫る――まさにその言葉がぴったりとハマる。 「ハハァ…………いいぜ、死ねよ」 ――首輪だけを残して、ゼクス・マーキスが歪む。 バンッッッ!!――と、自動車のタイヤが爆ぜるかのような鈍い破裂音が響いた。 「くか――」 びちゃり、びちゃり。 「くくかきくかこ――」 湿った柔らかい何かがべちゃべちゃと叩きつけられる音。 「くかきかここかこくかくかか――」 それが断続的に続く中、甲高くどこか非人間的な響きの哄笑が生まれ、徐々にそのボリュームを上げていく。 「くか――ぎゃは、ぎゃは、ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははは ひゃっはっはっはっはっはははっはっはっはっはっはっははははははあははひゃはひゃひゃひゃはは、ひゃは ゲホッ、ゲホッ、ぎゃは、ひゃははははははははははははははははははははははははははははははははははは ゲッハハハ、ハハハハハハ、ハハ、ハハハハハハハハハハハ、ヒャッハッハッハッハッハッハッハッハッハハ ギャハハハハハハ―――――――――――――――――――――――――――――――ッッッッッッ!!!!」 可笑しくて可笑しくてたまらない。 息が切れるまで笑いつづけ、むせてもなお収まらずに笑い続ける。 口裂けの怪物みたいに、いっぱいに広げた口腔から、こみ上げてくる衝動のままに感情をぶちまけた。 楽しい。楽しい。 殺すのは楽しい。 スッキリ爽快、殺す度に思考がクリアになっていく感覚すらある。 「笑わせてくれんじゃねェか負け犬君がよォ! いいぜェ! 文句なしの完全勝利、キルゼムオールでキッチリ締めてやらァ!! 鬼になれだァ!? 悪魔でも魔王でもなってやらァ! 俺を誰だと思ってやがる!! 俺は最強で無敵のレベル5様なンだ!! テメェやそこらの雑魚みてェな弱い生き物なんかじゃねェンだよォォォォ!!!!」 べっとりと赤く染まったアスファルトの中心、生臭い血と骨と臓物の中で彼は吼える。 表面にゼクス・マーキスと刻まれた銀色のリングをその手に握り、夜の街に孤独な悪党が咆哮を轟かす。 その叫びはまるで誰も寄せ付けぬ悪鬼。 または寂しくて泣いている童のようで――。 【D-5 南部/一日目/真夜中】 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 [状態]:精神汚染(完成)、能力使用不可(使用可能まで約一時間) [服装]:私服 [装備]:パチンコ玉@現実×少量、アンチスキル用ニニ口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録 [道具]:基本支給品一式×2、缶コーヒー各種@現実×多数、首輪×3(アーチャー、利根川、ゼクス)、 H K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数5/12発/)@現実、3499万ペリカ、おもちゃの双眼鏡@現地調達、 真田幸村の槍×2、H K MP5K(SMG/40/40発/)@現実、その他デパートで得た使えそうな物@現地調達、ピザ×10@現実 Draganflyer X6(残バッテリー約10分)@現実、Draganflyer X6の予備バッテリー×4@現実、士郎の首輪解析メモ [思考] 基本:どいつもこいつもブチ殺して打ち止めを守る。 0:能力が使えるようになるまで身を隠す。 1:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)。 2:このゲームをぶっ壊す! 3:首輪を解析する。首輪を解除出来たらあの女(荒耶)をブチ殺す。 4:上条当麻は絶対に絶対に絶対に絶対にブチ殺す。 [備考] ※飛行船で首輪・制限の制御を行っている・主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。 ※ゼクス、政宗、神原、プリシラ、スザク、レイと情報を交換しました。 ※ライダーの石化能力・藤乃の念動力の制限・信長の瘴気・荒耶の魔術(不完全)を分析しました。 ※式の力で、首輪の制限をどうにかできる可能性があると判断しています。 ※橙子(荒耶)の名前は知りませんが、首輪の魔術礼装の作者ではないかと考えています。 ※ゼクスから士郎が解析した首輪の構造情報を入手しました。 【アンチスキルの22口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録】 学園都市のボランティア警備員であるアンチスキルが使う暴徒鎮圧用拳銃。 反動が小さく素人でも扱える22口径、弾頭もゴム製で、あたってもせいぜい肋骨が折れる程度の威力しかない。 ◇ ◇ ◇ デパートの上層部から眺める真夜中の街並みは、街灯の人工的な明かりが星屑の海を思わせる。 戦国の世にはない、天井から床まで一面すべてギヤマンでできた透明な壁。 そこから透けて見える夜景を眺めつつ、第六天魔王こと織田信長は建物内で調達した酒瓶に口をつけた。 足元に広がる下界をよくよく見てみれば、先刻の戦による余波であちこちから火の手が上がっている。 まさに戦場の跡。打ち砕かれし建築物は朽ち果てた姿を晒し、骸は誰にも顧みられぬまま捨て置かれる地獄。 信長にとっては見慣れたものだ。汚れし世に救いなど一辺も無く、邪気と魔性に満ちた人界――それが戦国。 「夜に参ずるは黒凶つ……下天の内に充ち満ちて……永劫現を貶めん……」 再び酒をあおった。 一旦、外套と鎧を外しており、その下の肉体に布切れを裂いて包帯の代わりとし、傷を覆ってある。 今は休息の時だ。ここから見る限り、辺り一帯は静かなものである。 遙か遠方からでも立ち昇った、先程のような大きな戦の機は未だ見えない。 天の理なくば、是非も無し。 ここは力を蓄え、刻来れば地獄の釜を開くが如き鏖殺の戦を始めるべし。 百鬼眷属、我が背名にあり。 我が刃は厄災の刺。 我が覇道は疾走する狂喜。 我が抱きし闇は浮世を慟哭する魂で満たし、死に至る病で埋め尽くす。 我が名は第六天魔王――織田上総介信長也。 「人間五十年……下天の内をくらぶれば……」 織田信長は、この幸若舞・敦盛の一節をことあるごとに好んで舞った。 天下にその名を轟かせた桶狭間の合戦を思い出す。 武田と伊達を手玉にとり、今川の首を労せず討ち取ってみせた。 「夢幻のォ……如く……なりィ……」 能独特の朗々たる声が響きわたる。 凄絶な笑みを浮かべながら、いまの信長はこの死地を楽しんでいた。 「一度生を享けてェ…………滅せぬ者のォ……あァるべェきィかァァァァ……!」 信玄坊主ではないが、動かざること山の如しという言葉が今の状況には相応しい。 あと一刻も立たず放送とやらが流れるだろう。 その放送ごとに、この戦場における機は大きく動く。 死者の読み上げ――この殺戮遊戯における参加者――同盟相手、もしくは敵対関係の生存確認。それによる戦略の変更。 禁止エリアとやら――それによって移動すべき経路は大きく変わる。 信長はかつてそれを三度伝えられた経験で、もし自ら動くならばそれからだと正しく理解していた。 「全く……安い座興よ……」 持っていた酒ををすべて飲み干すと、無造作に瓶を床に投げ捨て、笑った。 魔王は今この時だけ殺戮の手を休め、無心で、ただ夜を眺めていた。 【D-5 南のデパート最上階/一日目/真夜中】 【織田信長@戦国BASARA】 [状態]:疲労(小)、ダメージ(中)治療済み [服装]:ギルガメッシュの鎧 [装備]:カリバーン@Fate/stay night [道具]:なし [思考] 基本:皆殺し。 1:放送後、荒耶の言葉通り、西に向かい参加者を皆殺しにする。 2:荒耶は可能な限り利用しつくしてから殺す。 3:首輪を外す。 4:もっと強い武器を集める。その為に他の者達の首をかっきり、ペリカを入手する事も考慮。 5:高速の移動手段として馬を探す。 6:余程の事が無ければ臣下を作る気は無い。 [備考] ※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。 ※ルルーシュやスザク、C.C.の容姿と能力をマリアンヌから聞きました。どこまで聞いたかは不明です。 ※視聴覚室の遮光カーテンをマント代わりにしました。 ※トランザムバーストの影響を受けていません。 ※思考エレベータの封印が解除されましたが、GN粒子が近場に満ちたためです。粒子が拡散しきれば再び封印されます。 ※瘴気によって首輪への爆破信号を完全に無効化しました。 ※首輪の魔術的機構は《幻想殺し》によって破壊されました。 ※具体的にどこへ向かうかは、次の書き手にお任せします。 ※荒耶との間に、強力な武具があれば譲り受けるという約束を結びました。 ◇ ◇ ◇ OZで長い時間を過ごした私は、戦争の中に勝手な美意識を持ち込んでいた。 戦う者同士、敵と味方にわかれていても、唯一認め合うことのできる精神としてだ。 私には守るものを持つ資格がない。だが、彼らに――ヒイロ・ユイらに言わせれば、この考えこそが甘いのだろう。 美意識を気取った体裁など必要ない。そんな戦いしかできないがゆえに、私はここで倒されただけのこと。 これは戦争なのだ。命をかけても学ばなければならないものがある。それができねば死ぬだけだ。 しかし戦いは激化するがゆえに、置いていかれぬ為には人間としての感情さえ必要としなくなっていく。 私は一人の兵士、自分の意思として、その流れに逆らう道を選んだ。 ヒイロ・ユイ……お前は純粋すぎる、そして優しすぎる。しかし、そうでなければ生きる資格がないということか。 ならば私は、どこまでも生き抜いてみせるべきだったのか。誰よりも厳しく、戦士として。 だが……リリーナを失い、その屍を踏み拉いてまで、修羅の道を踏破した果ての勝利にどんな価値があるというのだ? お前は強すぎる。私には……無理だ。 「そうか…やはり律儀な男だよ君は。だからこそ私も信頼がおけるというものだ」 ――トレーズ・クシュリナーダ。 幻か……それとも、この無様な私を地獄から笑いにきたのか。 「そういえば君の気が済むのかね。この世から戦いはなくならん。ならば常に強者が世界をおさめればいい。 人々は強い者に支配されることに喜びすら感じる。世界は戦い続けることが自然なのだ」 ――それが貴様の理想か。 「言った筈だ。私の理想など、一人の人間の妄想でしかない。 歴史は日々の積み重ねで作られる。個人の未来などに興味はない。 ゼクス・マーキス――いや、我が永遠の友ミリアルド・ピースクラフト。 君に会えたことを悲しく、また嬉しく思う。だがこの戦場は変わっていく。私の力が不足していた。 人の進む道はあまりにも気ままだ。ふくれあがる力が、これほどまでに人の心を置き去りにしていくとはな」 そうでなければ勝てはしない。 ゆえに貴様は敗れたのだろう。そして、この私も。 そうまでして得た勝利に価値を見出せぬがゆえに。 互いに生き残るべき人間ではなかったということだ。 「……古き良き伝統と人間の奥深い感情が築き上げた、いたわりの歴史。 私は戦うことが時に美しいことと考えると共に、命が尊いことを訴えて、失われた魂に哀悼の意を表したい。 私は、人間に必要なものは絶対的な勝利ではなく、戦う姿、その姿勢と考えている。 しかしモビルドールという心なき戦闘兵器の使用を行うロームフェラ財団の築く時代は、後の世に恥ずべき文化となりはしないか。 また一方で、戦わずにはいられない人間性を無視する完全平和をたたえる……。 宇宙コロニーの思想は、その伝統を知らぬ無知が生み出す哀れな世迷い言と感じていたものだよ」 だが――その宇宙から彼らが生まれたのだろう。 「そう。その境遇の中から、私の理想を超えた新しい戦士達が生まれた。それがガンダムのパイロット達だ。 彼らの純粋性に満ちあふれた感情の前に、私が愛した伝統はかすんで見えた。 守るべきものを失い、さらに守ってきたものに裏切られた戦士は歴史上敗者であるにも関わらず。 しかし彼らにその認識はない。それどころか、彼らはまだ戦う意思に満ちあふれていた。 美しく思われた人々の感情は常に悲しく、重んじた伝統は弱者達の叫びの中に消え失せる。 戦いにおける勝者は歴史の中で衰退という終止符を打たねばならず、若き息吹は敗者の中より培われる。 ならば私は……敗者になりたい」 だが貴様は、いや私もその敗者にはふさわしくないということさ。 むしろそれは衰退する勝者としての思考だろう。 人は場所、時間、環境を選んで生まれる事は出来ない……。 格差というものは確かに存在し、ゆえに生まれた瞬間、それぞれが生きる境遇は異なっている……。 それが宿命だ。そして世界はあまりに無慈悲で残酷なのだ。 「我々は衰退すべき勝者として生まれたがゆえに……結果として敗れるべき勝者にしかなれなかったと……?」 いや……私や貴様が焦がれた彼らは、そんなことなど露ほども考えていない。 彼らは、ただ明日を求めただけだ。 勝者か敗者か、きっとそんなことは最初から関係ないのだよ、トレーズ。 残酷な世界。 無慈悲なる宿命。 孤独に過ぎる冷たい荒野をただ一人で進まねばならぬとしても……。 「それでも彼らは――ただ明日を求めた、か」 ああ。 そうだ。 きっと、それこそが――、 【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 死亡】 時系列順で読む Back 夢幻の如くなり(前編) Next Moonlight Blue 投下順で読む Back 夢幻の如くなり(前編) Next Mobius Noise 258 夢幻の如くなり(前編) ゼクス・マーキス GAME OVER 258 夢幻の如くなり(前編) 織田信長 275 拡散スルハ死ノ恐怖 258 夢幻の如くなり(前編) 一方通行 267 生物語~すざくギアス~(上)
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施設名 商品名 値段 ショッピングセンター ミネラルウォーター 120ペリカ 拳銃 (エンフィールドNo.2) 1000万ペリカ 散弾銃(モスバーグM590) 2000万ペリカ バイク(V-MAX) 3000万ペリカ タコス移動販売車(片岡優希仕様) 4000万ペリカ ヘリコプター(燃料極小) 1億ペリカ 蒼崎橙子作の義手(右) 1億ペリカ 蒼崎橙子作の義手(左) 1億ペリカ 蒼崎橙子作の義足(右) 2億ペリカ 蒼崎橙子作の義足(左) 2億ペリカ 蒼崎橙子作の内臓 1億5000万ペリカ ナイトメアフレーム RPI-V4L ガレス 2億ペリカ サービス 義肢取り付けサービス 無料 皮膚の移植サービス 3000万ペリカ 闘技場 ピザ(ピザハット) 1000ペリカ 拳銃 (南部14年式) 1000万ペリカ 日本刀(太刀) 1000万ペリカ 長剣(グレートソード) 1000万ペリカ 短剣 (ダガー ) 500万ペリカ 銃剣(ベヨネッタ) 2000万ペリカ ソードブレイカー 1億ペリカ 地雷 100万ペリカ エレキギター(ランダム) 50万ペリカ エレキベース(ランダム) 50万ペリカ ドラムセット(ランダム) 50万ペリカ キーボード(ランダム) 50万ペリカ サービス ライブ会場サービス 料金不明 ギャンブル船 麻雀牌セット 1万ペリカ 脇差 100万ペリカ デリンジャー 600万ペリカ トカレフTT-33 800万ペリカ ベレッタM92 900万ペリカ 牌譜 1000万ペリカ 手榴弾セット 1000万ペリカ 陸奥守吉行 2000万ペリカ 鬼神丸国重 2000万ペリカ RPG-7(グレネード弾×3、煙幕玉×2付属) 2500万ペリカ 参加者1人の位置情報(1時間) 3000万ペリカ 軍用車両 4500万ペリカ ホバーベース 1億3000万ペリカ 機動兵器一覧 MS(A.C.195) OZ-06MS リーオー 2億ペリカ OZ-07AMS エアリーズ 3億ペリカ MS(A.D.2307) MSJ-06II-Aティエレン地上型 2億ペリカ SVMS-01ユニオンフラッグ 4億ペリカ SVMS-01O オ-バーフラッグ(※先着1機のみ) 4億5000万ペリカ ヨロイ サンキュー海サイッコー号 1億ペリカ ブラック・クレイドル(有人) 2億ペリカ KMF RPI-11グラスゴー 1億ペリカ RPI-13サザーランド 1億5000万ペリカ オプション MS シールド(リーオー用) 2000万ペリカ ビームサーベル(リーオー用) 3000万ペリカ ビームライフル(リーオー用) 5000万ペリカ KMF アサルトライフル 1000万ペリカ スタントンファ 1000万ペリカ 大型キャノン 3000万ペリカ メーザーバイブレーションソード 5000万ペリカ その他 多数 サービス エスポワール号出航サービス 料金不明 死者の眠る場所 ピザ(ピザハット) 1000ペリカ 拳銃 (コルト・パイソン) 700万ペリカ 日本刀(打刀) 800万ペリカ サブマシンガン(グリースガン) 1600万ペリカ マシンガン(MG3) 2000万ペリカ 対戦車擲弾発射器(パンツァーファウスト) 2500万ペリカ 自転車 500万ペリカ バイク 2000万ペリカ 乗用車 3000万ペリカ トレーラー 5500万ペリカ 花束 500ペリカ 柄杓 500ペリカ 手桶 1000ペリカ 箒 1000ペリカ 線香(マッチ付き) 1000ペリカ サービス 断末魔サービス(ショートバージョン) 10万ペリカ 断末魔サービス(ミドルバージョン) 30万ペリカ 断末魔サービス(ロングバージョン) 50万ペリカ 薬局 ポカリスエット 120ペリカ ハーブティー各種 1000ペリカ 注射器 3000ペリカ 風邪薬 300ペリカ 痛み止め薬 500ペリカ 包帯(20m・1巻) 2000ペリカ 救急車 5000万ペリカ 他酒類各種 サービス アンリ・マユによる治療サービス ※先着1回限りのサービス 治癒魔術による治療サービス 1億ペリカ 憩いの館 飲料水1L 120ペリカ 『ガラナ青汁』『きなこ練乳』『いちごおでん』各種セット 500ぺリカ 携帯食 1000ペリカ 清澄高校の制服 5000ぺリカ 救急セット 100万ぺリカ コルトガバメント(マガジン7発入り×4もセット) 1000万ぺリカ 接着式投擲爆弾×10 3000万ペリカ ヨロイ・KMF・モビルスーツ各種完全型マニュアル 4000万ぺリカ メタルイーターMX 5000万ペリカ リリーナの防弾仕様リムジン(ピンクとゴールドの二種類があります) 6000万ぺリカ 濃姫のバンカーバスター 7500万ぺリカ 設置型ゲフィオンディスターバー(使い捨て) 1億5000万ペリカ 機動兵器一覧 RPI-209 グロースター 2億ぺリカ VMS-15 ユニオンリアルド 3億5000万ぺリカ OZ-12SMS トーラス 8億ぺリカ サービス 『戦場の絆』プレイ時に自機が選択可能 1000万ペリカ 象の像 象の像(ミニチュア) 100ペリカ お守り(健康・安産・優勝) 1万ペリカ 矢×10 10万ペリカ リフレイン 10万ペリカ ブラッドチップ(スペック:低/高) 50万ペリカ 弓 500万ペリカ カラドボルグⅡ(レプリカ) 1000万ペリカ ゲイボルグ:(レプリカ) 1500万ペリカ エクスカリバー(レプリカ) 2000万ペリカ 長刀 2000万ペリカ 鎧・兜 2000万ペリカ 警備ロボット 3000万ペリカ オートロボット 6000万ペリカ スーパーカー(フェラーリ・エンツォ、赤) 8000万ペリカ 機動兵器一覧 RPI-212ヴィンセント 2億3000万ペリカ OZ-07MSトラゴス 3億ペリカ GNR-010オーライザー 4億ペリカ 富岳 5億ペリカ サービス 換金律2倍 この換金機で首輪を換金した場合、金額は2倍になる 遺跡 天然水 150ペリカ ジュース 200ペリカ オール 1000ペリカ ゴムボート 5万ペリカ 照明器具 10万ペリカ モーターボート 100万ペリカ 西洋剣 1000万ペリカ アサルトライフル(AK-47) 2000万ペリカ GNミサイル(2発) 4000万ペリカ 木造船 6000万ペリカ 揚陸艇 1億ペリカ 機動兵器一覧 ポートマンⅡ 2億ペリカ OZ-09MMSパイシーズ 3億ペリカ ドラクル 5億ペリカ サービス 転送装置 1人につき3000万ペリカ 入力した任意の座標へ空間転移できる。ただし範囲は会場内に限定 E-2学校 油性ボールペン(黒) 200ペリカ 油性ボールペン(赤) 200ペリカ 油性ボールペン(青) 200ペリカ 修正液 400ペリカ ノート 200ペリカ マジック(12色セット) 1500ペリカ 給食(一食分) 500ペリカ 硬式野球用 金属バット 25000ペリカ 硬式野球用 ボール 1000ペリカ 硬式野球用 グローブ 35000ペリカ カーボン竹刀 25000ペリカ 剣道着・袴セット 20000ペリカ 剣道用防具一式 60000ペリカ 焼き土下座機 800万ペリカ 巨大ピザ専用オーブン 2500万ペリカ サービス 伝言サービス 伝言の録音は1分につき50万ペリカ、最大3分まで。聞ける人間を指定するオプション利用には追加で100万ペリカ E-7学校 サービス 伝言サービス 伝言の録音は1分につき50万ペリカ、最大3分まで。聞ける人間を指定するオプション利用には追加で100万ペリカ 廃ビル オートマトン三機 1億ペリカ 紅蓮弐式 3億ペリカ サービス まとめ売り
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疾走する超能力者のパラベラムⅤ ◆hqt46RawAo ◆ 『全て終わった後に/迷いと答え/もう一度』 ◆ 「――まァ、そォいう事があったわけだ」 長き語りは終わる。 一方通行は自分が見てきた事実をありのまま告げた。 死と生。戦いの行方。嘘はない。 殺した者は『殺した』と。 生きている者は『殺し損ねた』と。 偽らずに、全てを上条に語った。 「それでのろのろと南下してきたところ、オマエとばったりってな」 上条は暫くの間言葉を発する事も出来なかった。 ずっと、一方通行の語る事実をかみ締めるように、拳を固く握り続けていた。 「なんでだ……?」 漸く搾り出した声は震えていた。 「なんでお前はそんな事を……」 「あン? 説明しなきゃわかンねェのか?」 「…………ッ」 問いかけつつも、上条は半ば答えに辿り着いていた。 おそらくは、自分のせいなのだ。 上条があの時、無意識に一方通行よりも御坂美琴を優先したから。 あの状況で死体に拘った。 上条なりの生き方を通した結果が、一方通行を凶行に向わせた。 「畜生……ッ」 一層、強く拳を握り締める。 もう取り返しが付かないのだ。 失われた命も自分の間違いも。 あの時こうなると知っていれば、などという言い訳はきかない。 結果が全てであり。 結果的に上条は間違えた。 事実はそれだけなのだ。 (じゃあどうすれば、良かったんだよ……) 既に知らされた間違い。 にも拘らず上条は迷う。 どうすれば良かったかなど明白なのだ。 上条は自分の生き方を貫き、それが結果的に巡り巡って人の死に繋がっただけ。 それは間違いでもあり、同時に避けようもない事故でもある。 だが上条には流せない。 割り切れない。 今までこんな事は無かったのだ。 彼は彼なりに生きて、それで彼の世界を守る事が出来た。 なのに今回はどうしても上手く行かない。 幾ら決意を固めても、全力でぶつかっても好転しない事態が在る。 あげく、自分の生き方、やり方を否定された。 何故なのか? 自分は何も変わっていないはずだ。 だが、全てが否定され、現に全ては裏目に出た。 大切な仲間は失われた。 守ると約束した人間はもう死んだ。 その上、確固たる己も否定された。 何も変わっていない筈のに、全てが否定される。 全てが間違いだった。 ならば……。 (俺は……何かを間違えているのか?) 結局はそこに帰結する。 揺らぐ意志が、決して揺らがない生き方を見失う。 「俺は……」 「で、俺がなンでここでオマエとしゃべくり続けているかというとだな」 上条の呟きを無視して一方通行は話し続ける。 顔を上げた。 当然、一方通行が殺し合いに乗ったのだとすれば、ここで上条と戦う事になる。 だが彼は暢気に話す一方で、未だに自分から仕掛ける事はない。 「最初はな。オマエとちっとばかし喋り終わったらそれでサイナラしようか、とも考えていたンだ……。 なンせ残り時間が後一分もねえ。その右手と真っ向勝負はちと分が悪りィだろ?」 「なら、なんで……」 何故まだここに留まっているのか。 「ああでも、やっぱ駄目だ。駄目なンだよ、今のオマエは駄目だ……。ふざけンじゃねえぞ?」 その瞬間、押さえつけれられていた怒気と殺意が顕になる。 「今のオマエの存在だけは許せねえ。死ンじまえよ、今すぐに……。この世から消えうせろ」 狂気の叫びではなく。 冷たい失望の刃が上条を刺す。 完全にキレていた。 この時、一方通行は己を支配する狂気を超える程の怒りを湛えていた。 一方通行自身にも、その怒りの正体は理解できていない。 彼は今、己の内側から沸きあがる不可解な感情に突き動かされている。 「……勝負だ。リターンマッチだぜ最弱(さいきょう)」 一歩、踏み出した。 一方通行はこのとき、狂気からも、理屈からも乖離した行動をとっていた。 殺意に狂わせる脳裏の存在に従うならば、有無を言わさず出会い頭に上条を殺していた筈である。 未だに残る理性の判断に従うならば、残り時間のリスクから早々にここを立ち去っていた筈である。 今の彼を突き動かすものは、怒り。 目の前の存在が我慢ならないという。 それは、意地という言葉に言い換えることが出来るかもしれない。 もう一歩、踏み込む。 近づいていく。 あの、幻想殺しに。 その歩みに、向ってくる敵の姿に上条はたじろいだ。 自分を見失いつつある彼には闘う覚悟も定まらないまま、強大な敵が再び目前に在る。 今はもう、拳の握り方も分らないというのか。 「クソッ! ………ォッ!!」 迷いに答えを出せないまま、揺らいだまま上条は挑んだ。 揺らいだ意志で足を引きずりながら敵へと駆け出した。 一方通行はそれを待ち受ける。 静かに歩き続けながら、約10メートルの距離が縮まっていくことを良しとする。 それは正に勝負だった。 彼は知っている。 住宅街、左右に逃げ場なしというこの状況。 遠距離攻撃徹すれば一方通行に負ける要素はない。 そして近距離は勝機が薄い。 にも拘らず、待ち受ける。 まるで上条当麻とだけは、同じ土俵で闘う事を決めていたように。 距離が詰まっていく。 ぐんぐんと、あっという間に、10メートルは5メートルに、5メートルは1メートルに、 そして、ゼロへ。 「「…………っらァッ!」」 重なる叫び。 同時に腕が伸びる。 拳が飛ぶ。 上条の右腕に、一方通行も己の腕で答えた。 交錯する腕(かいな)、しかしその差は歴然だ。 やはり上条当麻の拳が速い。 一方通行の腕は遅い。 それは分りきっていたはずの展開。 理が逆転することなど当然無く。 一方通行の腕よりも速く、上条の拳が一方通行の頬を殴り抜いた。 「……ギァッ!」 蟲が潰れたような声を漏らす。 無様に、殴られる。 だが一方通行は倒れなかった。 本来ならば、ここで吹っ飛ばされているはずだというのに。 「温りィ……。なンだァ? 今の糞みてェなパンチはァ……?」 殴られ、よろめきながらも一方通行は嗤った。 なんて情けない。 己はこんな無様な拳に敗北したのか、と。 「……!?」 そして上条はその挙動に意表を突かれていた。 敵の能力を知ればこそ、ありえない筈の挙動だった。 両手が、触れただけで死を呼び込む一方通行の破壊の両腕が、 それが通用しないはずの上条の右手を掴み取っている。 (何故!?) その言葉で上条の脳裏が満たされる。 だがマズイ。 嫌な予感だけはヒシヒシと伝わってきた。 このままでは、このまま身体を捕らえたままでは……。 (まさか、コイツ……本気(ガチ)で俺と勝負しようってのか……!?) 缶コーヒーやら銀球やらガラス片やら風やらの、優位な遠距離攻撃を一切省いた。 完全なる近距離戦。 小細工無しの格闘。 一方通行を知る上条にとって、それが一番意外な選択肢だった。 そして一方通行の手は上条当麻を捉えきれない。 だが唯一、捕らえられる可能性がある場所が在るとすれば。 殴る際、どうしても敵に触れなければならない、その右手に他ならない。 「まさか……!」 一方通行は最初からそこのみに注目していた だが本来ならばその手を捕らえる事も許さなかったはずだ。 殴り抜いた瞬間、一方通行は地を転がっていた筈なのだから。 けれどそうはならなかった。 それは拳のにぶり。 引き起こした要因はやはり迷いか。 迷いに揺れる意志と、 既に狂気すら飲み込んで前進する意志との差。 一方通行はよろめきながらも、決してその手を離さない。 上条当麻の右手を掴んで離さない。 絶対に逃がさない。 「…………ッッ!!」 そして伸びてくる破壊の手。 遂に届く。 上条当麻の無防備な胴体へと。 そこから逃れる為には、方法は、一つ。 「…………グ、ガハッ!!」 またしても響く打撃音と小さな声。 上条当麻は右手を掴まれたまま、 そのまま再度、一方通行を殴り抜いたのだ。 今度こそ吹っ飛ばされる一方通行の身体。 「はッ。 なンだよ、まだ見所は残ってやがる……。 殺し損ねちまったか……」 地を滑りながらも彼は嗤って言った。 だが上条は、既に満身創痍の体だった。 「ガ……グッ……ゴホッ……ゴホッ……」 体内から大量の血が逆流してくる。 口から流れ出す鮮血。 足の傷口から噴水の如き勢いで赤が吐き出されていく。 血流操作が中途半端な所で止められたからか。 上条は一方通行に触れられながらも、未だに即死は避けていた。 しかし十分なほど身体の内部を破壊され、凄まじい激痛が全身を巡っている。 「ギッ……がぁ……!!」 耐えなられない。 立ち上がる事が出来ない。 死に、瀕する。 そんな時でも上条の脳裏を占める感情はやはり一つ。 己は何を間違えていたのか。 どうする事が正しい道だったと言うのか。 本当に、自分のやり方はただの思考停止の成れの果てであり。 アーチャーやスザクやファサリナの言葉が正しいとでも言うのか。 理想を切り捨てて、犠牲を良しとして生きれば、こんな最後を迎えなかったのか、と。 「俺は……それでも……認めたくねえ……曲げたくねえんだ……」 感情が、知らず言葉となって溢れ出していた。 「何が。悪いんだよ……。皆が助かる道を選んで、最高のハッピーエンドを願って、何が悪いんだよ!! 畜生!!」 知らず叫びとなっていた。 誰にも向けられない、独白。 けれど、それに答える者が、今は居たのだ。 「……なンにも、悪くねえよ。そうさ、オマエはそれで良いンだよ」 思わず耳を疑った。 上条は伏せていた顔を上げる。 その視界は真っ赤に染まっていた。 聴覚にもガタがきている。 だが、聞き間違いではない。 目の前の一方通行は。 他でもない、相対しているこの宿敵は今確かに、上条当麻を肯定したのだ。 「…………な……?」 「あァ? なに驚いた顔してンだよ。 オマエは何も間違えちゃいねェって、言っただけだろうが……」 心底呆れた声で一方通行は話す。 「そりゃァ、オマエの考え方に理屈で難癖つけてくる奴も居るだろ。 まァ確かにオマエはちっとばかしカッコつけすぎだとは思うけどな……」 驚きを隠せない上条へと言葉を紡ぐ。 「けどよォ……オマエはその理想を、現実に変える力を持ってンじゃねえか」 お前は俺とは違うだろう、と。 悪に、闇に落ちなくとも、 正道を行きながらも全てを助けるだけの、強さを持っているだろう、と。 彼は言う。 「何をごちゃごちゃ悩ンでやがンだ馬鹿野郎が……。 今のオマエが弱いのは、あの時、傍に居た誰かがいねェからだろうがよ。 だが、それも含めて力だったはずだ。オマエは確かに、強かったはずだろォが。 だからこそ許せねェ。そのオマエがこンな所でカスみてェにいじけてやがるザマは、見てるだけで虫唾が走る……」 どのような運命の巡りなのか。 この島で誰もが否定し拒絶した上条当麻の理想と生き方。 それを唯一理解し、肯定し、回答を示すのはこの宿敵だった。 「そら、立てよ最強。オマエは何も悩む事なンざねェ。その強さと理想は俺が保障してやるとも。 なぜならオマエ……忘れたなンて言わせねえぞ? オマエは他の誰でもねェ―― この世で唯一、俺を倒した男なンだろうがッ!!」 お前は強い。間違いなどない。 その道を行く事に躊躇いなど憶えるな。 上条当麻にはその理想を成し遂げる強さが在る。 一方通行は本気でそう、言っていた。 本気で、信じていた。 一方通行はようやく己の怒りの正体に思い至る。 彼は我慢できなかったのだ。 自分を唯一倒した男が腐っていくのが、耐えられなかったのだ。 結局彼だけは、誰よりも上条当麻の強さを信じていたのだ。 他でもない、上条当麻に敗北した者として。 「…………あぁ……」 その言葉を聞いた瞬間、 上条はまるで頭の中の靄が、すべて吹き飛んだような気がした。 全身を激痛で苛まれる中で脳裏だけが何故かすっきりとしている。 「…………そう……だな」 ただ代わりに、憤りが湧き上がってきた。 自分が何を見失っていたのかを理解する。 己の理想に間違いは無かった。 それは目の前の敵が示してくれた。 後はもう一つだけ、上条自身が辿り着かなければならない答えが在る。 ではいったい何が足りなかったのか。 それも既に目の前の彼が示してくれた通りだ。 彼の隣に居た仲間が、今はもう居ない。 そう言う意味で、確かに上条は弱くなっていた。 だから……。 「ははっ……くそ……強くなりてえな……」 本当に情けない。 結局、己は仲間に助けられてばかりだった。 いざ一人になってみれば、現実はこんなものだ。 「俺は……強くなりてぇ……!」 だから今、上条は力を欲した。 たった一人でもすべてを守れる力を。 全ての不条理を殴り飛ばせるほどの力を。 「ああ、だったら……こんな所で死んでらんねぇか……。そうだよな」 そして、前に進む事を選んだ。 迷いはもうない。 己の弱さは自覚した。嫌というほど思い知った。 だが、迷いはもう無いのだ。 ならば後はその先に向って進むのみ。 「悪かったな……手間をかけさせた……」 「謝るなよ。オマエが俺に殺される事実はかわらねえ」 「ははっ……そうかよ。じゃあ、いくぜ」 「ああ、きやがれ」 そうして漸く、上条当麻は立っていた。 自分の戦いの舞台に、確固たる己を持って。 「俺は強くなる。その手始めに、まずはてめえを助けてやる!」 他ならぬ。『幻想殺し』上条当麻の声で、言った。 ■ ――ああそうだ、その眼だよ。 駆け抜けてくる少年の姿に、一方通行はどこか懐かしい思いを感じていた。 ――その拳だよ。 こちらを真っ直ぐに見据えるその眼光。 力強く振り上げられたその拳。 ――そいつに、俺は負けたンだ。 不思議な感覚だった。 まるであの日に戻ったようだ。 目の前の少年と始めて闘ったあの夜に。 ――そして、そいつに俺は……。 思い出す。 目の前に在る。 あの夜、颯爽と現れて、悪であった己を拳一つで殴り飛ばしたあの姿。 絶対に辿り着けないと今も確信する。 忘れられないヒーローの体現者。 その姿に――憧れた。 ――俺は……。 確信する。 理屈ではない心のどこかで直感する。 自分はやはり、今回も勝てないのだろう。 絶対にかなうものか、あの眼に、あの拳に、あの上条当麻に……。 ――俺はもう一度……。 これで、全部おしまいだ。 悪い幻想(ユメ)は上条当麻が全部殺してくれる。 己は負ける。 ――あの拳が俺に届けば、それで終われる。 その確信と共に、一方通行は幻想殺しを待ち受けた。 全ての不浄を払う。 上条当麻を待っていた。 ◆ 『終幕/はじまりのおわり』 ◆ 「……そう、か」 その結果は実の所、意外でもなんでもなかった。 倒れた者はもう動かない。 ならば、未だに立つものこそが勝者だ。 「ああ……それじゃァ、俺の勝ちだな」 即ち、ここに立つ一方通行こそが勝者となる。 路上に倒れた上条当麻には、もう既に息は無かった。 死んでいる。 不完全ながらも血流の逆流を受け。 内臓に重大なダメージを負い。 血を流しすぎた。 その順当な結果。 至極自然に、完膚なきまでに、普通に、死んでいる。 一方通行には分っていた筈だ。 すでに上条には決定的な一撃を与えていた事など。 即死でなくとも、上条は致命傷を負っていた。 それを知っていたにも拘らず、彼は驚いていた。 己の勝利に、上条の死に、疑問を感じている。 「けどよ。なンで、だ?」 何故自分は勝利しているのか。 目の前の幻想殺しと戦って、それで勝ってしまった。 その理由を問う。 答える者は居ない。 上条当麻はもう死んでいる。 この場には一方通行以外の誰もいない。 「いいのか?」 誰にともなく、一方通行は問い続ける。 この世の摂理はこの結果を良しとしたのか。 一方通行がこの先に行く事を認めるというのか。 ヒーローの敗北。 それを是とするのか。 「そういう事なのか?」 答える者はいない。 ならば、残っているのは結果だけだ。 正義が死んで、悪が勝ったという。 それだけだ。 「そう……か。そうかよ…………ヒ、ハ、ヒャハハッ! ヒャはハハハハハはハハハハはハハハハハハハハはッッ!!!!!! ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」 最後の幕が閉じる。 終わりは勝者の狂笑にて。 それが何を意味していたのかは誰にも分らない。 怒りか。 慟哭か。 歓喜か。 だがいずれにせよ、彼はもう迷う事など無いだろう。 疑問を挟む事もない。 ひたすらに。 どこまでも、この果て無き修羅の道を行くだろう。 その手がいつか、目指した救いに触れるまで―― 【上条当麻@とある魔術の禁書目録 死亡】 ■ 【E-4 南部の住宅街/二日目/黎明】 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 [状態]:精神汚染(完成)、肩口に打撲、能力使用不可能 [服装]:血みどろの私服 [装備]:アンチスキル用ニニ口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録 [道具]:基本支給品一式×4、缶コーヒー各種@現実×多数、首輪×3(アーチャー、利根川、ゼクス)、 H K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数5/12発/)@現実、3499万ペリカ、おもちゃの双眼鏡@現地調達、 真田幸村の槍×2、H K MP5K(SMG/40/40発/)@現実、その他デパートで得た使えそうな物@現地調達、ピザ×10@現実 Draganflyer X6(残バッテリー約10分)@現実、Draganflyer X6の予備バッテリー×4@現実、士郎の首輪解析メモ デイパック(サーシェスの死体入り)、ノートパソコン@現地調達、オレンジハロ@機動戦士ガンダムOO、9mmショート弾(14発) 救急救命セット@現実、柳刃包丁@現実、工具一式@現実、雑誌@現実×多数、真田幸村の首輪、 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実 タバコとライター@現実、ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実 レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、ドラグノフ@現実(10/10)、 GN首輪探知機@オリジナル、平バール@現実、麻雀牌@咲×31個、ユンケルスター@現実×8 コンビニの商品多数(内容は後の書き手さんにお任せします) [思考] 基本:どいつもこいつもブチ殺して打ち止めを守る。 0:――――――。 1:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)。 2:このゲームをぶっ壊す! 3:首輪を解析する。首輪を解除出来たらあの女(荒耶)をブチ殺す。 4:サーシェスの死体について、何か情報を集めてみる。 [備考] ※飛行船で首輪・制限の制御を行っている・主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。 ※ゼクス、政宗、神原、プリシラ、スザク、レイと情報を交換しました。 ※ライダーの石化能力・藤乃の念動力の制限・信長の瘴気・荒耶の魔術(不完全)を分析しました。 ※橙子(荒耶)の名前は知りませんが、首輪の魔術礼装の作者ではないかと考えています。 ※ゼクスから士郎が解析した首輪の構造情報を入手しました。 ※赤ハロとオレンジハロ間で通信が出来るようになりました。通信とは言えハロを通しているため、声色などはハロそのものにしかなりません。 ※当麻と式の力で、首輪の魔術礼装をどうにかできる可能性があると判断しています。 ※最悪の場合、生存者の中で殺し合いに乗った人間は、己を含めて四人しかいないと予想を立てており、 その内の二人は織田信長と浅上藤乃であると判断しています。 ※サーシェスの名前が放送で呼ばれなかった事には、死体に首輪が無かった事も含めて、 何か厄介な裏があると見ています。 時系列順で読む Back 疾走する超能力者のパラベラムⅣ Next おわりのはじまりⅠ「少女には向かない職業」 投下順で読む Back 疾走する超能力者のパラベラムⅣ Next おわりのはじまりⅠ「少女には向かない職業」 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ 一方通行 286 覚醒ヒロイズム 280 疾走する超能力者のパラベラムⅠ 上条当麻 GAME OVER